桃ジュース【桃】 (ページ12)

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(体調良いし、なんか買って帰ろうかなぁ)

いつもは帰るだけで精一杯だったから寄り道などはしたことがなかった。

コンビニでも寄ろうといつもとは別の道へと歩みを進める。

深夜のネオン街はやっぱり治安が悪い。

酔っ払って絡み合っている男女や道端で倒れている人、気弱そうな人に話しかけてキャッチしている黒服。

こんな普通の人は溶け込めないような環境を違和感なく歩けている自分がなんだか残念に思えてきた。

なんて一人でネガティブな思考に苛まれていると、

「ぐぁぁっ！」

叫び声が聞こえてきた。

今歩いている道の少し先、通過しなきゃいけない所だった。

横目で見つつ、気配を殺して歩く。

これもここら辺じゃよくある光景だ。

「おい、お兄さん。

早く返してくれないとどうなるか分かるよね？」

取立てか何かだろう。
薄暗くなった道の端の方、殴られ血だらけになった男と黒いスーツを来た長身の男とーー。

『えっ……』

臙脂色のスーツを着た男。

思わず立ち止まってその光景を見てしまった。

(あれ佐久間さんが着てたのと同じじゃない…？)

なんて考えていると、黒いスーツの長身の男がこちらを見た。

『っ…！』

その鋭い目つきに背筋が凍りつく。

慌ててその場から逃げるように立ち去る。

大通りに出て人目につきやすい場所に辿り着き、乱れた呼吸を整えた。

…

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