桃ジュース【桃】 (ページ41)

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…

『はぁ…………』

ベランダの柵に肘を置き、煙を吸う。

しばらくすると扉が開く音がした。

「おっ、先約」

ワイシャツにスーツ姿の佐久間さん。
横に来て煙草に火をつけた。

あれから、私たちは一般企業に就職した。

2人で暮らす家は今探している最中。
見つかるまでの間、今住んでいる私の家で一緒に住むことになった。

「今日も疲れたねぇ……」

そう言いながら煙を吐き出す佐久間さんの横顔はやっぱり綺麗だった。

『そうだね、まだ慣れないことばっかりだもんね』

疲れたねって言う割には口角が上がっている佐久間さん。

短くなった煙草を灰皿に押し付けたあと、

「でも、俺凄く楽しくてさ。

こんなに毎日ってキラキラするんだって、

なんか生きてて良かったなって思えたんだ」

佐久間さんはニッコリと微笑んでそう言った。

「Aちゃん、本当にありがとう」

『ううん、私なんか何もしてないよ』

「そんなことないよ。

Aちゃんのおかげで前を向けたんだ。

こんな俺の汚れた手を取ってくれてありがとう」

佐久間さんは私の背中に手を回し、優しく抱きしめた。

初めての距離感、佐久間さんの体温と鼓動が直に伝わってくる。

佐久間さんの手が綺麗だと言ったら嘘になる。

でも、もがいて生きていた私を認めてくれた佐久間さんを今度は私が受け入れたい。

その気持ちが伝わるように、と佐久間さんの背中に手を回した。

after story 〜fin〜