桃ジュース【桃】 (ページ14)

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出勤する度に予約表を見ては一喜一憂する日々。

前は嬉しかった前川様の予約も、佐久間さんの存在のせいかあまり気乗りしなくなっていた。

あれからも定期的に現れては突飛な金額を置いていく佐久間さん。

相変わらず優しくて気遣ってくれて、その時間だけが唯一の癒しだった。

「A」

『はい、どうされましたか？』

太ももに置かれた手を優しく握り返す。

「何か考え事でもしていたのかい？」

前川様は疑うような目で私の顔を覗き込んだ。

『いえ、前川様のことしか考えてませんよ？』

にっこりと笑って見せればフッと口角が上がった。

「そうか、それならいい」

私の優しく握り返した手を、今度は前川様の手が強く握り返してくる。

「AをNo. 1にしたのは私だからな…？」

その瞬間、背筋に冷や汗が伝う感覚がした。

初めて見た前川様の冷たい目つき。

(あぁ、そうだよな……)

まだ売れていなかった頃の私を見つけて可愛がってくれて。
未熟な私に大金を注ぎ込んでここまで育て上げて。

そんな私に目の前で考え事をされたら嫌な気持ちになるに決まっている。

その後、前川様は周りの人に見せびらかすかのように、沢山のボトルをテーブルへと運ばせた。

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