短編集【雪】

身長差【緑】 ページ8

…







阿「海ってなんでこんな広いんだろうね」





『ね〜、不思議』




今日は久しぶりのお出かけ。






目的もなく散歩していたら海辺にたどり着き今に至る。







阿「今度海について調べてみようかな」





スマホのメモ機能に「海」と書き込む亮平くん。





『亮平くんは本当に勉強熱心だよね、尊敬するよ』






上智大学に入れただけで凄いのに大学院まで進んだ亮平くん。常に努力は怠らず、暇さえあれば読書しているし勉強している。







ちなみに私は上智大学を卒業した後は一般企業に就職した。






阿「Aこそ、お仕事大変なのにいつも頑張ってて偉いよ」






ニコッと微笑んで私の右手を優しく包んでくる亮平くんの大きな左手。





阿「手、冷えてない？


大丈夫？寒い？」






『うーん、ちょっとだけ寒いかも』





夏だから半袖で出てきたけれど日が暮れれば夏でも肌寒い。





阿「これ、着て」





亮平くんが着ていたベージュのロングカーデを差し出される。





『えっ、いいの？亮平くんも寒いでしょ』





阿「大丈夫、俺男の子だもん」





『ふふっ、ありがとう』





カッコイイセリフだけど語尾がだもんになるあたりが亮平くんらしくてつい笑ってしまった。






お言葉に甘えて腕を通すが、亮平くんが軽やかに着ていたロングカーデがドレスみたいな長さになってしまった。






阿「Aが俺の服着るとぶかぶかになっちゃうの見るの好きなんだよね笑」






馬鹿にするようにクスクス笑う亮平くん。







『身長いじりやめてよ、もう頑張ったって伸ばせないんだから』







阿「その反応が可愛いから止めない笑」







そう言ってからかうように私の頭の上にキスしてきた。






付き合う前から片鱗は見え隠れしていたけれど、亮平くんは基本甘々なのに突然苦さを出してくる。






でもそれが何故か心地よくて堪らなくて好きが増していくから狡い。






実は、亮平くんに小さいって言われたくてずっとヒールを履いていないことは内緒。








…

大きい背中【桃】→←本当は【黒】

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