短編集【雪】

緩やかな時間【青】 ページ16

…






翔「ねぇ〜A」







『ん？なに？』







翔「なんでもなーい」







洗い物をしていると後ろからゆるりと回される腕。








最近ジムに通い始めたらしく以前よりも逞しくなっている。






翔太がなんでもないって言う時は決まってかまって欲しい時。








何年も一緒にいるから言葉にされなくても分かる。









『これ終わったら構ってあげるから、ソファで待ってて？』







翔「ん」








そう伝えれば素直に体を離されソファへと向かっていく翔太。









彼は所謂ツンデレ。



その内訳はツンが8割、残り2割がデレ。








基本的には喧嘩ばかりだし言い合いばかりだけれど、たまに甘えたになる時がある。








それは大体が仕事で何かあった時とか疲れている時。








『お待たせ』








翔「ん、洗い物ありがと」








ソファに腰掛ければすかさず太ももの上に乗せられる頭。








これは撫でろってサインだ。








『お疲れ様、何かあったの？』








優しく頭を撫でれば気持ち良さそうに目を細める翔太。








翔「うん、色々あった」









『そっか、いつもお仕事頑張ってくれてありがとうね』








翔「…………別に」







ストレートに褒めてあげればうっすらと赤くなる耳。








きっと明日の朝にはツンツンに戻るから、今だけでも精一杯に甘やかす。








翔「……、





Aもいつも家の事ありがとう」








『ふふっ、どういたしまして』








一切こちらを見ずに発された言葉。








表情は分からないけれど、さっきより一段と耳が赤くなってるから相当照れてるんだろう。








(ふふっ、可愛いなぁ)








頭を撫でながら、ふと自分の左手の薬指に光る指輪が目に入る。







まだ約束のものだけれど、それだけで胸がいっぱいになった。







翔「…………すぅ……」







いつの間にか寝息を立てて眠る翔太。








その寝顔を見つめながら将来を想像して1人微笑んだ。






…



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