短編集【雪】

ピアス【紫】 ページ11

…





朝の8時くらい。








洗面台で横に並んで歯磨きをする。









寝起きで目がほとんど空いていない辰哉の顔を鏡越しで眺めていると、




左耳に2つ空いたピアスの穴に目がいく。









その視線に気づき、









深「どうしたの？」









と含んだ泡を吐き出してから聞いてきた。









『ピアス開いてるなぁって』









深「あ〜、開いてるねぇ」









『何その返し』









その左耳を掴んで軽く引っ張ってみる。









深「おい！なんだよ急に！



シンプルに痛いから！」









前々から興味はあったピアス。








痛いとか聞くし不安だらけだけど、辰哉とお揃いにしたい気持ちも相まってそろそろ開けようかなと思っていた。









そして、実はピアッサーも1つ買ってある。









歯磨きを終えてまた部屋でゴロゴロし始めた辰哉をよそに、戸棚に隠してあったピアッサーを取り出しまた洗面台に戻る。









そして左耳に狙いを定めて手に力を入れるも勇気がなかなか出せない。









(ピアスってこんなに開けるの勇気いるの……？)









プルプルと震えてくる手、目に涙が滲む。









(でもピアッサー開けちゃったし……やらなきゃだよな……)









ふぅっと息を吐き出して深呼吸をしていると、









深「なぁにしてんの？」









洗面台の扉からひょっこりと辰哉が現れた。









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