◆29話 ページ30
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「……あ。あそこ!」
悠さんの指さした方に目をやる。
花火が上がっていた。
綺麗だった。
遠くに、小さく見えた花火。
建物に邪魔されて、下の方は隠れている。
それでも綺麗だった。
まず赤が上がって……青……緑……黄色……。
次々と、一瞬の隙間もなく花火が夜空を照らしていく。
遅れて響く音は、次の花火にかぶさるように鳴って消えていった。
花火は、満開に咲いた後、形を変えながら散って。
それが一瞬、ハート形に見えた。
熱いものが両目から零れ落ちる。
頬を涙が濡らしていく。
さっき、もう泣くことはないというくらいたくさん泣いたのに。
それなのになぜか、まだ枯れることなく私の頬を濡らし続けている。
「だからなんで……っ」
隣にいる悠さんにも聞こえないほどの小さな声。
それは花火の音とともに消えた。
悠さんは私の涙に気づかない。
花火を見つめている。
直斗も、この花火を見てるはず。
……彩音ちゃんと一緒に。
きっと、私のことなんて忘れて。
さっきまであんなに、忘れてほしいと。放っておいてほしいと思ったのに。
今更、もう遅いのに。
私はもう、直斗の隣にはいらない存在。
そう考えるだけで涙を止めることができなくなる。
あとからあとから、流れていく。
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みなとS*(プロフ) - まゆみさん» 読んでてぱっと感じる印象とは違った、っていうのを目指していたので嬉しいです……!コメントありがとうございました、頑張ります〜 (2019年6月13日 5時) (レス) id: 9a77893b90 (このIDを非表示/違反報告)
まゆみ - 面白かったでっす!!彩音さんは友達たくさんいそうなイメージあったけど実際はいじめられてたんですね。いじめって怖い。これからも頑張ってネー!!!^^ (2019年4月15日 3時) (レス) id: d4ac2eaa92 (このIDを非表示/違反報告)
みなとS*(プロフ) - アラーネアさん» アドバイスありがとうございます。おもしろかったといってくださり光栄です。アドバイスを糧に精進します! (2018年11月2日 22時) (レス) id: 06aef33b9e (このIDを非表示/違反報告)
アラーネア(プロフ) - いいですよ!ですが、面白かったですよ!!完結していますが頑張ってください!! (2018年11月2日 16時) (レス) id: 7bda2fd29b (このIDを非表示/違反報告)
アラーネア(プロフ) - 読みました!!セリフ以外全てが夢主sideになっているのはなるべく避けたほうが良いです。そして、もう少し人の様子などを入れた方が、読み手も想像しやいです。小説は、いかにどれだけ文章で状況、様子を表現できるか。ですので、夢主が考えていることは()にした方が (2018年11月2日 16時) (レス) id: 7bda2fd29b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みなとS* | 作者ホームページ:
作成日時:2018年7月27日 7時