補習授業を回避せよの段7 ページ42
木登り用の義足に履き替え、お役御免となった鉤状の義足を使って木の枝に引っかけては遠心力で次の木へ、という移動方法で森の真ん中へ向かう
チリンと涼しげな音と共に、太い幹の木の枝の上に着地し息を吐いたところで、上から仙蔵が降ってきた
軽く龍之介の隣に降り立った仙蔵の腰紐には、四枚のハチマキが結わえ付けられている
仙蔵「お互い、同数か」
『あと残っているのは、乱太郎、きり丸、しんべヱの三人かな?』
仙蔵「そうだな」
『…ペナルティ、やめる〜?どうせ罰ゲームなんかなくても、まぁ夕食を奢るとかは置いといても、委員会の手伝いや焙烙火矢作製も、内職の手伝いも、いつもお互いやってるもの』
仙蔵「…そうだなw」
フッと笑みをこぼした仙蔵が龍之介の隣に座る
仙蔵「さて、どうする?」
『仙蔵に任せるよ?…昔っから作戦を考えるのは仙蔵で、動くのは僕だったじゃない』
仙蔵「…そうだな」
それが、反対になってしまったのは
四年前
龍之介が右足を失ったとき
『なぁに、僕のこと心配してくれてる?大丈夫だよ〜あの頃みたいに痛くなることはもうないしねぇ』
仙蔵「動きも戻った、か?」
『あの頃以上ですぅ。僕、もう六年生なんだから。二年生のときと一緒にしないでよね』
ふてくされる龍之介の横顔に、仙蔵が笑いをこぼす
昔から、龍之介の育ての親に当たる自分の両親よりも、二人だけのときの方が表情がクルクル変わる龍之介のことが、自分にとって誇りでもあった
同級生、ましてや後輩たちには見せない年相応の少年の顔が、嬉しくて
言葉には出さないけど、特別感があって
仙蔵「…あの頃の私は良い拾い物をしたものだ…」
『ん?』
仙蔵「いや。では、昔のようにタッグを組むか?」
『いつものように、の間違いじゃない?』
独り言を聞き返してくる龍之介に、そう言って留め、作戦を持ちかける
『…うん、いいと思うよ。あの三人なら引っ掛かるだろうね』
仙蔵「よし、行くぞ」
二人が枝の上に立ち上がる
『仕上げといこうか』
仙蔵「へまをするなよ?」
『大丈夫だよ。いつだって僕らは完璧だから、ね!』
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作者名:湊 | 作成日時:2023年9月22日 8時