危険な薬草取りの段 9 ページ26
乱太郎「えっと…」
仙蔵「説明しよう…ここじゃなんだ、こっちに…」
立花先輩に促されて部屋の前から少し離れた縁側に腰を下ろす
仙蔵「その…乱太郎、見たんだろう…?」
乱太郎「えっと…」
仙蔵「ぶちギレ龍之介」
乱太郎「あ、えっと、見ました…」
仙蔵「それを見られたからって、引かれたと言って押し入れから出てこなくなった」
乱太郎「わたしに怒ってるのではなく、ですか?」
仙蔵「それはない。怖がらせてしまったと落ち込んでいるくらいだからな」
とりあえず怒っているわけではないと安心して息を吐く
そんなわたしの横で、立花先輩がこれは公言していないことなんだが、と前置きを置いて話始めた
仙蔵「あのときの龍之介は…
いつもの感じと大きく違っていただろう…?
もっと荒々しくて、どこか不気味で…
…あれは龍之介であって、龍之介じゃない
多重人格、と言えば分かりやすいか」
乱太郎「えっ…?」
仙蔵「一人の人間の中に、複数の人格が存在すること
それが多重人格なのだが…
龍之介は人格交代の間も、記憶はあるんだ
故に、今ああなっている訳なんだが」
乱太郎「でも、以前読んだ医学書には記憶が受け継がれることはない、と…」
仙蔵「だが、アイツは人格交代の間に何があったか覚えている
個人差があるんだろう
それは本人にしか分からん
…
その医学書には、多重人格が現れる原因はなんだと?」
乱太郎「えっと…幼いときの精神的ストレス、と…」
仙蔵「私と龍之介が出会ったのは五歳のときだった
…その時にはすでに、もうひとつの人格は存在していた」
滅多に出てくることはなかったが…、と仙蔵がため息をつく
仙蔵「過去に何があったのかは私も知らない
龍之介が言おうとしないからな」
何か、五歳になるまでのあいだに先輩にあったんだろう
別の人格を作り出して、自分の心の中に逃げ込まないと壊れてしまうような、大きなことが…
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作者名:湊 | 作成日時:2023年9月22日 8時