六年生の実戦的実習の段 10 ページ11
文次郎side
ガターンッと大きな何かが倒れる音がし、一気に城内が騒がしくなった
人気がなくなり、いとも簡単に城の中に入れるようになる
まぁ龍之介の仕業だろう、と考えているとピョロロロロロ…と合図の音が人の声に紛れて聞こえてきた
それに気付いたのは俺だけではなく、他の面子も目配せをしあってそっと気配を消して城内に入る
女装と化粧を消し、屋根裏にのぼって体を屈めながら静かに進む
城の中の天井の上をウロウロしていると、向こう側から龍之介もやってきた
…なんだろうか、同室六年歴だからだろうか、心なしか龍之介の表情が疲れている気がしなくもなくも…?
それに気付いたのは仙蔵も同様で
仙蔵「なんか疲れていないか?龍之介」
『うーん、そうかもしれないねぇ』
留三郎「何かあったか?」
『…、いや、何もないよ。寝不足じゃないかな?』
嘘つけ、と言いたいのを我慢する
コイツは余計なことは言わないタチだしな
特に、仙蔵が絡んできた場合なぞは
飄々として何を考えているのかよく分からない奴だが、その実周りをよく見ていて、その場で気付かなくても後々「あ、あの時の行動はフォローするためのものだったんだな」などと納得することも多い
自分でそれを言わないから、よく考えないとコイツのおかげかどうか分かりにくい
損な奴だ
が、仙蔵ほどでないにしろ、俺だってコイツと同室六年目なんだ
一年の頃は分からなかったことも、いい加減分かるようになってくる
何が言いたいのかと言うと、コイツが「あえて」今は言わないということは、「今ではない」ということなんだろう
言うべきタイミングを考えての行動なのだろうから、あえて突っ込むことはしない
これが、ベストな対応だ
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作者名:湊 | 作成日時:2023年9月22日 8時