4本の薔薇 IV【Fischer’s】

177.恋人でいたい ページ31

私は明々後日にニューヨーク行きの飛行機に乗る予定だ。

そしたら約2週間はマサイくんに会えない。

電話もできるしスカイプもできる。

けどやっぱり直接会う方がいいに決まってる。

この時計はその寂しさを少しでも埋めるためかな。



「本当、寂しがり屋だね」



そう言うとマサイくんは無言で唇を尖らせた。

彼の細やかな反抗すら堪らなく愛おしく感じて、時計の入った箱を持ったまま抱き着いた。



「ふふ、ごめんね。でも私が大好きなマサイくんのこと忘れる訳ないでしょ？」

マサイ「……ほんと？」

「うん。出発する日までは一緒にいようね」



絶対だからな、なんて声が耳元で聞こえる。

来年こそは一緒に過ごしたいな。

YouTuberとしての仕事の関係で一緒に向こうに行くのは難しいと思うから、日本でいい。

年末年始の恒例行事はできないけど、お父さんに会うのはいつでもできる。

お父さんも分かってくれるはずだから。



マサイ「来年は、一緒に過ごしたいな」

「私も今それ考えてた」

マサイ「いいの？」

「お父さんには会おうと思えばいつでも会えるよ。だから大丈夫」

マサイ「そっか」

「楽しみだねぇ。私も皆と鍋したい」

マサイ「それもいいけど、俺は2人がいい」

「甘えため」

マサイ「別にいいだろ、付き合ってるんだから」



私はマサイくんの彼女で、マサイくんは私の彼氏。

もちろん私だって2人で過ごしたいって欲はある。

けど、Fischer'sの皆に迷惑をかけたくはないって気持ちもある。



「じゃあ皆で鍋してから抜けて2人で過ごすってのは？」

マサイ「……仕方ないなぁ。約束ね」

「うん、約束……ねぇ、まだ今年の年末年始も終わってないのに、もう来年の約束は流石に早すぎじゃない？w」

マサイ「確かに早いかもなwあ、でもさ」

「うん？」

マサイ「その約束はつまり、来年もAと恋人でいられるってことだろ？」



そうか、もしもの話。

私とマサイくんが別れる可能性はなきにしもあらず。

来年の年末年始を2人で過ごそうって約束は、その時にも恋人でいようってこと。



「私はマサイくんと別れる予定なんてこれっぽっちもないよ？」

マサイ「そんなの俺だってそうだし」

「ならよかった」



私はいつまでもマサイくんの隣にいたいと思ってる。

これから先も、ずっと。



マサイ「なぁ」

「なぁに」

マサイ「俺のこと忘れないでね」

「忘れないってば」



ニューヨークに着いても、ずっと君を想ってるから大丈夫だよ。

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