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黒猫 ページ50

俺は暫くの間、動画を休ませてもらう事になった。視聴者さんには申し訳ないけど、理由は伏せた方がいいってシルクの助言もあり、それに甘える事にした。


せめて四十九日が過ぎるまで。それまでは動画はお休み。まあする事なんて何もないんだけどね。


お葬式の帰り、一人でとぼとぼ歩いてた。数時間前から雨が降っていて途中のコンビニで傘を買った。そういえば、Aさんと相合傘ってした事なかったな。やっとけばよかった。



「……あーあ」



Aさんがもうこの世にいないなんて、実はまだ少し実感が湧いてない。さっきお葬式でお別れしたのにね、何でだろう。


生まれ変わってまた俺と出逢ってほしいなぁ、なんて……非現実的な事ばっかり考えてしまう。俺の記憶なんて持ってなくていいから、また逢いたいなぁ。


そんな下らない事を考えていた時、雨の音に混ざってか細い声が聞こえた気がした。



「?……気のせいかな」



もう俺が住んでるマンション目の前だし、近くに住んでる人の声かもしれない。そう思って再び歩き出した。マンションのエントランスで傘を閉じた時。視界の端で何かが動いた。


エントランス横の茂みがガサガサ動いてる。何だ…?警戒してるととても小さい物体が現れた。



「え……猫?」
「みぃ…」



猫だった。全身真っ黒の仔猫。小さい。体の大きさからして生まれてまだ1ヶ月とかそれくらいじゃないだろうか。


どうしよう、俺はどうするべきなんだ?連れ帰るのも……近くに母猫がいるかもしれないしな。でも雨で濡れてるし震えてる。どうしよう、どうしよう…。



「……ちょっと、待っててね」



仔猫にそう声をかけて走り出した。あの仔猫が全身真っ黒なら母猫も多分黒猫なんじゃないか。そう思って黒猫を探した。けどいくら周辺を探しても見つからない。


マンションのエントランスに戻るとあの仔猫は大人しく待っていた。震えてる仔猫を持ってたハンカチで包み込んだ。この時間ならまだ動物病院やってる筈だ。



「とりあえず一回家に行こうか。すぐに病院に連れて行ってあげるからね」



ハンカチの上から指で撫でたら俺の言葉が分かったのかみぃ、と返してくれた。可愛いな。それからみぃみぃとたくさん鳴いてくる。大丈夫。大丈夫だよ、俺がいるからね。









────これが、俺と黒猫と出逢い。

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Ria(プロフ) - やばいです…感動ものです……グスッ、泣いちゃいました…。素敵な作品をありがとうございます…!! (2020年3月22日 21時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 善処さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - wwwさん» やっぱりそう思いますよね…分かります。 (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - danchanさん» 三宅さんが手話ができると知ったので、これは出すしかないと思い、出させていただきました! (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゆりりんさん» 作者も書いてて泣きそうになってました…(´;ω;`) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月9日 0時

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