また君の隣にいたい【Fischer’s】

不満 ページ13

「はいどうぞ」



Aさんの手にお菓子の缶を渡すとキョトンとしてそれを見つめる。え、ダメだったかな。Aさん嫌いなお菓子とかないから大丈夫だと思ったんだけど……。


パッと顔を上げた彼女の顔はどことなく不満そう。訳が分からず首を傾げるしかない。違うやつ選べばよかったかも。



［お菓子用意してたの？］



缶を持ちながら手話するという器用な事をするAさん。……もしかして、ちょっと不満そうなのって悪戯したかった、とか？


そのまま伝えれば頷かれた。マジか。それは想像してなかった。えぇ……うーん……。


ちらりと見ると不満そうに頬を少し膨らませてる。え、可愛い。今までそんな不満ですって顔見た事ないから新鮮。可愛い。


Aさんと出逢って半年は過ぎたけどこの表情は初めて見る。可愛いなぁ。なんて思ってる事がバレたらもっと怒っちゃうかな。



「でもそういう顔も可愛いけど、俺は笑った顔の方が好きだなぁ」



Aさんの頬を両手で挟んで軽く押すと簡単に空気が抜けた。不満気で眉間に皺を寄せた表情から一転、目を細めて笑い出した。


やっぱりそっちの方がいい。俺が好きになった笑顔。俺の右手の上にAさんが左手を重ねてきた。クスクスと笑ってるAさんが凄い可愛くて愛おしくて、鼻の頭にキスをする。


ちょっと顔を離してからもう一回、今度は唇に。相変わらず慣れてなくて真っ赤になるAさんを抱き締めた。本当に可愛い。好き。



「あーもう、ほんと可愛すぎ」



何でこんなに可愛いんだろう。もうどんな悪戯されても許しちゃうぐらい可愛い。いやむしろ悪戯されてみたいかも。Aさんどんな悪戯すんのかな。


……あーでも、そうだな、それは来年に取っておこう。そうしよう。



［悪戯は来年ね？］
［忘れないでね］
［忘れないよ］



Aさんと過ごすこういう行事の出来事を忘れる訳ないじゃん。大切な思い出なんだから。次の行事は……もうクリスマスか。


クリスマスプレゼント何にしようかなぁ。誕生日プレゼントですら悩んだのに、もっと悩む。あ、Aさんとクリスマス過ごせるかな……。いいや、シルクに事前に言っておこ。


恋人と過ごすクリスマスって俺何気に初めて。メンバーと過ごすのもそりゃ楽しいけど、Aさんと過ごすクリスマスはもっともっと楽しいんだろうな。

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