苦戦 ページ4
「うーん……思ってた以上に難しいぞぉ」
そうでも言わないと心が折れそうだった。手話ってこんな難しかったんだな。高千穂さんが手話を使えるか聞いてないけど、俺が最初に話し掛けた時、一瞬手が手話っぽい動きをしてたから使えるとは思うけど……。
もう一度本と睨めっこをする。今まで手話に一切触れてこなかったからな、全然分からん。でもそんな事言ってる場合じゃない。
「せめてこんにちはとありがとうは覚えなきゃ」
よし、と気合いを入れて基本的な手話だけは頭に叩き込んだ。筆談以外に、高千穂さんと直接会った時に話す手段が欲しかったから。
それから何時間も手話に没頭してたからシルクからLINEが来てた事に気付かなかった。俺がLINEに気付いたのは送られてきてから1時間は過ぎた頃。あ、ヤバい今日撮影だった!
シルクからのLINEは今どこにいるのかと心配のLINEだった。約束の時間から1時間は過ぎてる。急いで必要な物をリュックに詰め込んで家を出た。今から全力でシルクの家に向かっても20分はかかる。本当ごめん!今から行くから!!
…
「ごめん!!!」
「まあ何事もないならいいけど……どうした?」
「もっきゅんが遅刻なんて初めてじゃない?」
「しかも1時間の遅刻な」
「本当申し訳ない……」
シルク家に着いてシルクとンダホとマサイの姿を確認した瞬間、俺は頭を下げた。あんなにも手話を覚える事に夢中になってたとは自分でもびっくりした。
皆には悪いけど、手話を勉強してて遅れた事は内緒にしとこう。だから3人にはうっかり寝過ごした事にした。嘘ついてごめん。でも高千穂さんの事は俺だけの秘密にしておきたい。
「次からは気を付けろよー」
「うし、じゃあモトキも来たし始めるか」
普段から時間を守ってるからか、特に責められる事も深掘りされる事もなく撮影の準備を始めたシルク。今はそれがありがたかった。隠し事をしてる事は胸が痛むけど、それはまたいつか話そう。いつになるかは分からないけれど。
そうだ、撮影が終わったら高千穂さんにLINE送ろうかな。あ、でも今でさえ時間遅いし、撮影終わってからだともっと遅くなっちゃうな。よし、今からLINEしよう。
「ごめん、ちょっと待ってて」
「どした?」
「撮影始める前にLINEだけ送らせて」
「LINEくらい断らなくてもいいのにね」
「それな」
遅れた罪悪感があるから断ったのに。まあいいや、早くやっちゃおう。高千穂さんのトークを開いて文を打ち込んだ。
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瀧(プロフ) - wwwさん» 作者もです笑 作者の願望が詰まった作品になっております笑笑 (2019年7月18日 22時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
www - ああ、こんな恋したい (2019年7月17日 18時) (レス) id: 423bf3fc22 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ひなさん» そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります(≧∀≦) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» ありがとうございます(*゚▽゚*) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - この小説好きです。投稿頑張ってください! (2019年7月4日 0時) (レス) id: 0d818dd5f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2019年7月1日 0時