表情 ページ9
嬉しい、って感情がよく分かる。例え話せなくても、耳が聞こえなくても。だってAさんは表情が豊かな人だから。
ハッとしたAさんは俺がした手話と全く同じ手話をした。ありがとうって言うのは俺の方なのに、何でお礼を言うんだろう？首を傾げればAさんはスケッチブックにペンわ走らせた。
《“ありがとう”って言ってくれたお礼》
《それは“どういたしまして”じゃないんですか？》
《いいの。嬉しかったから》
それと、とAさんは続けて書く。それを見た時俺は悩んだ。俺は年下な訳だし……。
《敬語は使わないで》
Aさんは眉を下げて俺を見てる。Aさんにそんな顔向けられたら首を縦に振るしかないじゃないか。一回頷くとそれはそれは嬉しそうに笑って、顔を輝かせた。可愛いなぁ。
《これからもよろしくね、モトキ君》
《うん、よろしくねAさん》
これからも、か。これからも俺に会ってくれるのか。嬉しい。よかった。
名残惜しいけど、今日はもう帰ろう。もう暗くなり始めてるし暗い中Aさんを歩かせる訳にはいかないからね。
《今日はもう帰ろうか。俺送ってくよ》
《大丈夫だよ？》
《いいの。だって》
しまった。つい勢いで“だって”まで書いちゃった。どうしよう、続き書いても引かれないかな。でもAさん続き待ってるし……。いいや、書いちゃえ。
《まだAさんといたいから》
書いちゃった。Aさんはどんな反応してるかな。俺より頭一つ分低い位置にあるAさんの顔を見ると真っ赤に染まっていた。顔だけじゃなくて耳までも。こういう免疫0なんだなAさん。
手を繋いだ時も、今もそう。Aさんは男に慣れてない事が分かった。そういうのとは無縁だったのかな。
でもそんな所も可愛い。好きだなぁ。Aさんの色んな表情を近くで見てみたい。
ベンチから立ち上がってAさんに手を差し出した。帰ろう、の意味を込めて。Aさんはおずおずと俺の手に手を伸ばした。重なった手を包み込む。小さくて温かい手。緩く握るとAさんも握り返してくれた。
Aさんが指を差した方向に向かって2人と1匹で歩く。いつもの歩くペースより遅く。少しでもAさんと長くいるために。Aさんは周りを気にしてるのか、俺の隣じゃなくて半歩後ろを歩いてる。すぐじゃなくていい。いつかでいいから。いつか、俺の隣を歩いて欲しいな。
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瀧(プロフ) - wwwさん» 作者もです笑 作者の願望が詰まった作品になっております笑笑 (2019年7月18日 22時) (
レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
www - ああ、こんな恋したい (2019年7月17日 18時) (レス) id: 423bf3fc22 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ひなさん» そう言っていただけて嬉しいです！頑張ります(≧∀≦) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» ありがとうございます(*ﾟ▽ﾟ*) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - この小説好きです。投稿頑張ってください！ (2019年7月4日 0時) (レス) id: 0d818dd5f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀧 | 作成日時：2019年7月1日 0時
