【短編集】あいとは。【prsk】

神代類・奪い愛 ページ1

僕には好きな人が居た。
名前はAさん。
司くんの彼女。

司くんに紹介された時、思わず目を奪われた。

サラサラな髪。
大きな瞳。
陶器のように白い肌。
握れば折れてしまいそうなくらい細い手足。
こぶりな口ぶりは思わず噛みつきたくなるくらい色っぽくて。



僕はどうしても彼女が欲しくなってしまった。


『類くん、こんにちは！偶然だね』
道でAさんと会った。
偶然じゃない。全部僕の計画。だけど鈍感なAさんは気付かない。


彼女はいつも司くんの話をする。
僕といる時も、いつだって。


『この前司くんがね、私にプレゼントをくれたの！えへへ、嬉しかったなぁ』


今だって、そうだ。

司くんの話をする時君は、心底幸せそうな顔をする。
花が咲くような笑顔は、いつだって司くんへ向けられている。
一度だって僕を見てくれたことは無い。


そんな彼女と司くんが、どうしようもなく憎かった。

だから僕は考えた。その幸せを壊そうって。





｢こんな時間にどうしたんだい、Aさん｣
『類くん…』

僕の顔を見た途端、涙がぽろぽろ頬を伝った。


『司くんが、知らない美人な女の人を抱きしめてて、それで、それでっ』
嗚咽を漏らす。



｢それは…辛かったね。君を傷つけると思って黙っていたんだけど、司くんはずっと前から君を騙してたんだ」
『そんな…もうやだ…助けて類くん』


｢Aさん｣

彼女の濡れた頬を包んで持ち上げる。



｢僕は君をずっと前から好きだったんだ。僕は君を裏切らない。だから｣



俺にしなよ







彼女は知らない。
司は相も変わらず彼女を想っていることを。

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