ん ページ2
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咄嗟に周りを見渡しても一面…赤、赤、赤。
Happy Birthday!!などと書かれた様々なカラフルな壁飾りも返り血らしきものを被って真っ赤にぬられていた。
彼女が用意してくれたであろう美味しそうなチキンやらケーキやらの良い匂いと、慣れたくもない血腥い臭いが混じって、思わず吐き気を催した。
恐怖と怒りで異常なまでに震えが止まらない体で、なんとかAの方へと近寄った。
でも、どうしてもすんでのところで彼女の体へと伸ばした手を引っ込めてしまう。それを何度も何度も繰り返した。
だって。もし私が彼女に触れて、彼女の体温やその脈の有無を感じ取ってしまえば、全く信じたくなどないが…彼女の死というものを確定させてしまう気がしたから。それが何よりも恐ろしくて恐ろしくて仕方がなかった。
しかしもしAが生きているならば一刻も早い処置を要するはずだ、と恐怖を振り切って彼女の肌に触れた。
「…っ!!まだ温かい、脈もある…!!
A、A、聞こえるかい!?今すぐ硝子の所へ運ぶから…!!」
一瞬ホッと胸を撫で下ろしたが、すぐにそんな場合じゃないとハッとなって、Aの体を持ち上げようとした。
しかし、彼女はそんな私の声に気づいたのか、うっすらと目を開けながら、己の体を持ち上げようとする私の腕をぐっと掴んで言った。
「…やめて、どうせ、もう、助からない、から。」
「っ、何言って…!!そんなこと冗談でも言わないでくれ…!!」
「こんな、冗談…言わないよ。
ねぇ傑、今…幸せ?私はずっと君を…幸せにしたかった。けど、けど…。」
出来なかった、君は泣きながらそう言った。
私はそんな君の言葉に「は?」と自分の思っていた何倍も低い声を出してしまった。
彼女は今、自分がどれだけ馬鹿なことを言っているか自覚があるのだろうか。
「そんなもの、幸せに決まってるだろ。君のおかげで、ずっとずっと私は幸せだった。“あの日”、君が馬鹿みたいに泣いて止めてくれなきゃ…私は今、ここにはいなかった。だから…本当にずっとずっと感謝しているんだ。
君が私を幸せに出来なかった、だって?そんな訳があるものか。君は私の幸せそのものなんだよ。
どうしてそれを分かってくれない…?」
三年の夏。
高専には、呪術界には、悟さえ居ればいい。私の居場所なんてもうどこにもない。そう思っていた。
でも君が馬鹿みたいに泣いて、私の居場所はまだそこにあるんだと、嫌ってくらいに分からせてくれたんだよ。
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ような - Happy birthday!!! (2022年2月3日 23時) (レス) id: 663ab8d7b2 (このIDを非表示/違反報告)
aaa - 夏油様ハピバ!!ホントにこういう世界が現実だったらいいのに... (; ;) (2022年2月3日 19時) (レス) @page3 id: 94f6373e66 (このIDを非表示/違反報告)
るきー流季ー - こ、こんなにも短編で終わり方が素敵な物語ってこれ以外にありませんよ!?あと誕生日おめでとうございます、夏油様〜!!どうか、どうか、呪術廻戦最後では羂索から解放されてハッピーエンドを迎えてほしいっす・・・ (2022年2月3日 15時) (レス) @page6 id: d8f15dd322 (このIDを非表示/違反報告)
みたらし(元三日月) - 最高すぎます! (2022年2月3日 13時) (レス) @page5 id: 122f030fb9 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - うわ〜〜!最高でした!!お誕生日おめでとう傑☺️💕 (2022年2月3日 13時) (レス) id: c9636ac8db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかかのおにぎり | 作成日時:2022年2月3日 0時