甚爾さん、ありがとう。 ページ6
『…アドバイス？』
『気に入らないなら全部ぶっ壊してやればいい。そんだけだ。死にたきゃその後死ねばいい』
『でもそんなこと…』
『やりゃ出来るだろ。家の戦えるやつは丁度さっき俺がだいぶ間引いたし、お前の分身ともやりやったが、まぁあれくらい戦えてりゃ家の非術師共殺すくらい大したことねぇだろ』
ただ恵まれてるガキのくせに術式も呪力も持たない俺と同じ目をしてるってのが気に食わなかっただけだとか。俺は“悪い人”らしいから、このいい子ちゃんなガキにせっかくなら悪いことを教えてやろうとか。本当にこのガキが自分の家をぶっ壊してくれたら面白いだろうなとか。
多分その程度の出来心。
俺はその後眠ったガキのポケットに適当なメモ用紙を突っ込んで、ある仕事へと向かった。拘束道具は相変わらず緩いままにしておいた。
・
なんて雑で横暴なアドバイスなんだろうと思った。でも確かに私はこの時初めて自由への希望を持ったのだ。なんとなくもっとこの人から話を聞きたいと思った、もし私が自分の家をぶっ壊す時が来たならその時は一番にやってやったと報告したいと思った。
けれど彼がもう二度と私を閉じ込めた部屋に帰ってくることも、私の家から身代金を受け取ることも、私が自分の家を潰す瞬間を見ることも、結局なかった。
彼はどうやら仕事でしぐじって殺されたらしい。
後日彼を殺したとかいう人物がその親友と共にやってきた。これが私が五条先生と夏油様と出会った日。
その後私は不本意ながら自分の家へと返された。だが幾分か気分はマシだった。ただ何も無かったはずの私には、ポケットの中に彼が残したメモのおかげもあって、いつか自由になって彼のお墓参りに行こうという希望があったのだ。
《自尊心を捨てて全部諦める生き方なんざまだ早いんだよ、マセガキが》
それから一年後。
あの日の出会い以降よく私を気にかけてくれていた夏油様の後押しもあって、遂に私は自分の家をぶっ壊してやったのだ。
『ねぇ、悪い人。ちゃんと見てる？私、諦めなくてよかったよ』
───
───ガッ！
「いった！！」
「何ぼーっとしてんだ。ちゃんとやれ。休むなら休め。つかそんな顔でこっち見んな。なんか気持ち悪い」
「ごめんって。…うーん、ちょっと休憩！！」
恵に訓練用の木製の武器で思いっきり叩かれた箇所をさすりながら、地面に大の字に寝転び、だだっ広い──自由の象徴のような青空を仰ぐ。
(ねぇ、甚爾さん。あの日私を拐ってくれてありがとう)
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ハノン(プロフ) - 八百万さんの優しさがしみました、、、😭更新ありがとうございます。 (4月6日 15時) (
レス) @page15 id: b1aa25fb33 (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！前編から読ませていただいておりました！これからも楽しく読ませていただきます！ (7月12日 20時) (レス) @page6 id: f500b808b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかかのおにぎり
| 作成日時：2023年7月12日 20時
