最悪で最高のアドバイス。 ページ5
聞くところによれば、彼はどうやら仕事で私を誘拐したらしい。私を人質にとってあの家から身代金を大量にぶんどるつもりだと言う。
『…身代金をあの人たちが払えばわたしを家に返すの？』
『ああ、そうだな』
『なら、なら───身代金をぶんどった後は…あの家になんか返さずにわたしを殺して！！』
『…は？』
『あなたはお金があればいいんでしょ？ならあの家から好きなだけ奪えばいい。でもその後わたしを家に返すのだけはやめて、わたしは帰りたくない。もうわたし同士で殺し合いたくない。あなた悪い人なんでしょう？だったらお金をもらうだけもらって約束なんて破ればいいじゃない…！』
『…ハッ、術式に恵まれたお嬢様かと思えば、意外と苦労してんだな。通りであんだけお前自身のこと増やしてやがったのか。…まあ同情はする。だが俺はクライアントとの信頼関係は守りたい主義でな、悪いがお前を家に返す。もちろん自死もさせてやんねぇ』
ああ、この人は天使様なんかじゃない。閻魔様でもない。だってこの人は天国にも地獄にも連れてってくれやしないのだから。
・
身代金目的でガキをさらって1週間。もうすぐでこのガキの家の方で身代金の準備が出来るらしい。
にしてもこのガキ、大した拘束をせずとも抵抗する素振りやら逃げ出す素振りやらを見せることは無かったな。きっとコイツは自分がどうなろうが心底どうでもいいんだろうな。
つくづく可哀想なガキだとは思う。禪院生まれの俺が言うのもなんだが、あんなイカれた家に生まれてなければ、呪力も術式も戦闘センスも恵まれているのだから優遇されて何不自由なく生きていけただろうに。
この全てを諦めたような…自尊心なんかとっくの昔に捨てちまったような目が、俺にそっくりだとなんとなく思っちまった。ったく、くだらない同情心なんか抱いたところで一銭の金にもなんねぇんだけどな。
『これはお前には関係ない話だろうが、聞きたきゃ聞けガキ。俺は禪院の生まれだが術式どころか呪力が微塵もねぇ。だから家の中で蔑まれてきたわけだ』
『…だったら何』
ほんとコイツの言う通りで…だったら何だってんだ。まじで自分でもなんでこんな話をコイツにしているか分からない。
『呪力や術式の有無で言えばお前と俺は正反対たが幼少期の境遇が凄惨だってことに関しては同じだ。そういうわけだからその誼で超簡単なアドバイスをしてやるよ』
悪い人からの最悪で最高のアドバイスを、な。
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ハノン(プロフ) - 八百万さんの優しさがしみました、、、😭更新ありがとうございます。 (4月6日 15時) (
レス) @page15 id: b1aa25fb33 (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！前編から読ませていただいておりました！これからも楽しく読ませていただきます！ (7月12日 20時) (レス) @page6 id: f500b808b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかかのおにぎり
| 作成日時：2023年7月12日 20時
