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「…少しお喋りが過ぎるんじゃねぇか?
人の事情にズケズケ踏み込むうるせぇ女は嫌われるぜ?」
『…ケホッ、それはそれはご丁寧にどうも。
でも別に良いじゃないですか。愛する想いを忘れられないのなら忘れなければいい。私を重ねてしまったのなら私を貴方の愛する人の代わりに傍においてしまえばいい。』
私にはこの男が私に似ている誰かを心底愛していたのだと痛いくらいにわかった。なぜなら首を絞められている私よりも首を絞めている男の顔の方が苦しそうだったからだ。
そんな私の悪魔のような提案に男の瞳は大きく揺らぎ、首を絞めていた手も自ずと緩む。…行ける。そう思った。
『ほら、私の価値は貴方にとって5億円…いやそれ以上に相当するでしょう?
どうです?私を買う気になりましたか?』
私が男の瞳を真っ直ぐ見つめて言った。
そんな私をしばらく無言で見つめた男は、突然心底可笑しそうに笑うと私の首から手を離し、そのまま両手を上げて「ははっ、降参だわこりゃ」とさっきまでの威圧的な態度から一変して軽い口調で言った。
「わかった。お前を5億で買ってやるよ。」
そして男はそうニヒルな笑みを浮かべて言うと、「俺は伏黒甚爾だ、お前は?」と名乗り、私にも名前を尋ねた。
『AAです。よろしくお願いしますね。ご主人様。』
私は名前を名乗ると少し口角を上げてお辞儀をする。しかし顔を上げるとそこには頬を引き攣らせたご主人様の姿が。…何かまずかっただろうか?
「ご主人様呼びやめろ。俺がそういう趣向のやつだと勘違いされんだろ。」
『……そうですか。分かりました旦那様。(…満更でもなさそうなのにな)』
「…なんかクソみたいな家のこと思い出すからその呼び方も却下だ。様もつけるな。甚爾でいい。」
クソみたいな家、そういった甚爾さんの顔は酷く歪められていた。よほど嫌なことでもあったんだろうな。…でもまぁ契約の成立した今、この人の思い出したくないようなことに必要以上に触れる必要は無い。
『分かりました。甚爾さん。』
こうして私は伏黒甚爾───術師殺しと言われているらしい───に5億で買われました。
これから始まる甚爾さんとの主従関係が絡まった生活に不安もあるけれど、どこか胸を躍らせている自分もいた。
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やんこち - ぐぁぁぁ…気になりすぎる!!とても素敵な作品をありがとうございます✨続き待ってますっ!! (10月21日 2時) (レス) @page19 id: 53e7ed5961 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - えっとですね!直哉くんなにかに目覚めたらしいのパスワードを教えてください! (2023年3月18日 21時) (レス) @page3 id: aff6f0444c (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - もっと皆の絡みが見たいです(甚爾が呪詛師から東京校の術師側に転職するのもアリかもです) 更新頑張って下さい (2022年1月22日 0時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - 案外甚爾がこっそり払っていたんですね私も夢主が払うのだとばかり思ってました 甚爾ごめん 何げに仕事ではちょくちょく高専側から何故か甚爾が駆り出されみたいななんだかんだの関係や絡みがあったら面白いと思うのですがどうでしょうか? (2022年1月22日 0時) (レス) @page19 id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - もっとこの家族達の事や難しくても高専や「さ.し.す」組と色々な絡みが見てみたいです 続編楽しみに待ってます (2021年7月29日 19時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかかのおにぎり | 作成日時:2021年4月18日 6時