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「いのちゃん…なんのつもり?」
「わかった?薮の本音。
ひかるがいなきゃなんにも出来ないんだって」
「…でも、だって…あいつが、俺を捨てたんだよ」
「あーもう、なんの勝算もなしに俺がこんなお節介焼くと思ってんの?
マネージャー、このあと飯だから薮んちの方面行ってくれる?ひかるも一緒だから〜」
有無を言わさないいのちゃんの雰囲気に負けて、ずるずるそのまま以前の土曜日と同じ方面へ。
だって、やぶ風邪ひいてるから。
一人の時に風邪ひいたらどうせ何も食べないか、カップ麺みたいなもん食べてるか。
薬だって、どこにあんのかわかってる?
病院、ちゃんと行ったのかよ?
たくさん頭の中に言い訳を並べてるうちに車は着いちゃって、降り淀んでる俺にいのちゃんは
「あそこのご飯屋さん、わかる?
あそこで高木と飯食ってるから。もしなんかあったらおいで」
優しく笑って、俺の頭を撫でてからさっさと降りていった。
.
ここのチャイムを押すのなんて初めてだ。
付き合ってから引っ越したんだし、合鍵持ってたから押す必要なんてなかったのに…今は違う。
これだけのことで胸の奥がぎゅって苦しくなった。
『はい』
「あ、おれ…」
『は、光!?────ガチャンっ!ドンッ、────あっちぃ!!』
「やぶ!?おい、あけろ!」
『いってぇ…』
呻くようなやぶの声と同時にロックが外れる音がして、エントランスのドアが開いた。
はやくこいよ、なんて柄にもなくエレベーターにいらいらしたりして、急いで向かった部屋のドアの鍵はあいていて。
「…よぉ」
出迎えたやぶのスウェットには大きな茶色いシミが出来てた。
「なにしたんだよ」
「光がいきなり来るから、ビックリして持ってたマグカップ落とした」
「…コーヒー、入れたの?」
「…だって1回飲んだら、缶コーヒーなんて飲めねぇし。
光、コーヒーメーカー置いてったろ」
コーヒーなんて入れられるようになったんだ。
俺がいなきゃ、何も出来ないなんてことはやっぱり有り得ない。
やぶも、俺も、一人の大人の男なんだから。
「…光?それで、なんか用?」
「あぁ…風邪ひいてんだろ?それで飯とか…薬とか心配になって。まぁその様子なら大丈夫か、わり。帰るわ」
スーパーの袋を差し出した手を思い切り引かれて、
────バサンッ
袋が玄関先に落ちる音と同時に懐かしい匂いに包まれた。
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やまたかLOVE - とても面白くて大好きな作品ですっ!更新頑張ってください! (2020年1月5日 19時) (レス) id: 6533d85759 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 可愛くて素敵なやぶひか供給ありがとうございます〜。ぜひこれからもお願いしたいです。切実にお待ちしています。 (2019年3月19日 21時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 1話1話、それぞれのお歌に合った物語の紡がれ方になっていて、読んでいてとてもワクワクしています。おこがましいですが、私からもリクエスト宜しいでしょうか。嵐の相葉くんの『じゃなくて』を題材に、なにか1つ書いていただきたいです。更新待ってます! (2019年2月1日 17時) (レス) id: dea4eacb95 (このIDを非表示/違反報告)
ららん(プロフ) - はじめまして。ありやまとありちねの見させていただきました!今回も素敵です!もし良ければ続編で有岡くんと山田くんが結ばれるバージョンが見たいです。 (2019年1月25日 16時) (レス) id: 5ecec66850 (このIDを非表示/違反報告)
もか(プロフ) - Shee.さん» Sheeさん本当ですか(震)こちらこそ読ませて頂いてるので震えが止まりません涙こちらこそよろしくお願いします! (2019年1月25日 7時) (レス) id: dc2f2337d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shee.くじら x他1人 | 作成日時:2019年1月24日 23時