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涙を流して笑う薮さんを見てると、
あれ？王子様だって思った僕の頭がおかしかったのかな？
なんて気持ちにならなくもないけど、
｢コンセントって…あはは、も、薮さん！｣
｢もー、ほんとごめ、まさかさぁ｣
｢普通気づくでしょ、もうっ｣
｢はーあ、おっかし…っわ危ね！｣
薮さんがデスクに手をついた拍子に、積まれた雑誌がぐらりと倒れるのが見えて。
次に気づいた時には、薮さんの腕の中だった。
ただでさえ背の低い僕は座ってしまうと更に小さくて、背の高い薮さんに後ろからすっぽりと包み込まれて、頭を守るように抱きしめられていた。
｢や、ぶさん？｣
名前を呼ぶと、後頭部でどくんと一つ音が聞こえて、じんわりと熱くなる腕。
｢っ悪い！｣
焦った声で離れて行った人を思わず振り返ると、赤くなった顔を手の甲で隠していた。
なんでそんな顔するの？
ねぇ、薮さん。
僕、勘違いしちゃいそう。
｢っあ、あの。
データ飛んじゃってるかもだから、確認した方が…｣
｢お、おお、そうだな！ありがとう！
…うわ、消えてるやつある…｣
｢ちょっと見せて────あぁ、もしかしたら復元できるかも｣
決して広くない部屋に、カタカタとキーボードを打つ音と、治まってくれない僕の鼓動が響いた。
.
｢っはー、できた｣
｢マジ助かった…ほんとありがとう…！
腹、減ったろ？｣
｢あ、そういえば減ってるかも｣
集中していて気が付かなかったけど、外はもう真っ暗。
恩を返しに来たはずなのに、気が済まないからと夕食に誘われて食べに行くことになった。
｢あのさ、今から言う話嫌だったら断ってくれて構わないんだけど｣
｢え、なに｣
｢知念くん、俺の会社で働かない？
正直俺だけじゃ手一杯なんだけど、雇うあてもなくてさ。
うちなら、電車に乗らなくても通えるし、従業員は俺だけだから人見知りとかも気にしなくていい。
俺の事はもう平気だろ？…さっきから、ちょいちょいタメ口だし、な？｣
スラスラと淀みなく喋ると、"な？"って初めて見る少しいじわるな笑顔を見せた。
自宅から徒歩圏内、特技を活かせて、人付き合いもしなくてよくて、服装も自由、おまけに社長は超イケメン。
｢…たしかにこれ以上ない好条件だね｣
｢だろ？待遇面も優遇するぜ？｣
キザに左手を出す薮さん。
そう言えば利き手も、同じ。
道理でパソコンが操作しやすいはずだ。
｢…よろしくお願いします｣
サラサラした大きな掌を握り返した。
fin
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Shee.(プロフ) - とまとさん» ありがとう！上手いこと行けばあります！← (2018年11月1日 17時) (
レス) id: 8e67ef454c (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 完結おめでとー☆彡スピンオフあるの？！って喜んでます！☆連打できないのが悲しい(´；ω；`)楽しみにしてます♪ (2018年11月1日 16時) (レス) id: 561587332a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Shee.
| 作成日時：2018年10月24日 23時
