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はじまりは突然に(yb×cn) ページ23

yb視点


珍しく、ただなんとなく、学生時代が懐かしくなって電車に乗った時。

その路線に乗り入れてる線が増えてるだなんて知らなくて、車内は満員に近かった。


やっぱり慣れないことはするもんじゃない。

ただがむしゃらに部活して、それなりに勉強も恋もしていたあの頃は、ぼーっとしているだけでいつの間にか目的地に着いていたのに。


仕事柄世の中の物の流れやニーズと言うものが気になって、見たくなくても近くのサラリーマンの持ち物は目に入るし
聞きたくなくても女子高生の会話が耳に入る。


仕事のことを少し忘れたくて、乗ったのにな。


嫌でも"社会人"が板についている自分に呆れながらなんとなく感じた違和感。


つやつやの黒髪ショートに、形のいい唇をきゅっと噛み締めた横顔。
…その後ろのおっさん、距離感おかしくねぇ?


…あーもう、マジかよ。
変な正義感を振りかざすのはよせとよく言われたもんだけど、これが変な正義感だと言うなら正義などクソ喰らえだ。



「おい、お前なにやってんだよ」

「な、離せ、何をする」

「こっちの台詞だからそれ」


驚いたように見上げる黒髪ショートの子は前髪が長くて、片目しか見えない。

なるべく優しく笑いかけながら、
「君はどうしたい?」と問いかけると、目を伏せてふるふると首を横に振った。


あー、こんな大勢の前で痴漢されてました、なんて、恥ずかしいかな。


ちょうど次の駅に着いて、急いで逃げようとするおっさんに

「お前の顔、絶対忘れないから」

そう言い放ってから手を離した。



「ごめんね、余計なことしたかな。
ほっとけなくて…悪い」

尚もふるふると首を振るけど、よく見たら顔色は悪いし体も小刻みに震えている。


「…あーもうごめん、余計なお世話ついでにもひとつ余計なことするわ」


閉まりかけたドアに肩を入れて、その子の手を引いてホームに降り立った。


「大丈夫?」


「ありがとう、ございます…」


「あれ?君…男の子?」


そう聞くとびくりと肩を揺らして小さく頷いた。


「男なのに…情けない、ですよね」

「は?なんで?君は何も悪くないでしょ。
自分よりでっかい知らないおっさんに触られて、怖くないやつなんていねぇよ」


俺の言葉にパッと顔を上げて、ようやく目が合った。


嘘だろ神様。

死ぬほどどストライク。

・→←作者より



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Shee.(プロフ) - とまとさん» ありがとう!上手いこと行けばあります!← (2018年11月1日 17時) (レス) id: 8e67ef454c (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 完結おめでとー☆彡スピンオフあるの?!って喜んでます!☆連打できないのが悲しい(´;ω;`)楽しみにしてます♪ (2018年11月1日 16時) (レス) id: 561587332a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Shee. | 作成日時:2018年10月24日 23時

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