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hk視点
11月末、大通りの街路樹は銀杏が色づいている。
山田が選んでくれたグレーのアウターに紺のマフラーをぐるぐる巻にして、かさかさ音を立てながら道を歩く。
「ごめんねいのちゃん、付き合わせて」
「んーん、全然。暇だもん」
ギリギリまで働きたかったいのちゃん、男の人の出産はほんとに読めなくて、早産の可能性も高いって先生に言われて少し早めの産休に入ったんだって。
大ちゃんは決算に向けてまた忙しい時期みたいだから、寂しがり屋のいのちゃんが心配だな。
「山田は?忙しいの?」
「そうみたい。合宿の付き添いとかも多いしね」
「寂しかったらうち泊まりにくればいいのに。寂しいもん同士、ね?」
「おれは別に……まぁ寂しいけど」
山田の方が寂しそうな顔して仕事行くもんだから、言えないなんて内緒だ。
──いのちゃんが着いてきてくれたのは病院の定期検診。
珍しく人が少なくて、二階の入院病棟から人の声が聞こえるほどだ。
「もう、宏太へたくそっ!…っあー!痛いっ…」
「…産まれそうなのかな」
「ん、てかあの声…」
「えっ知り合い?」
「や、わかんねぇけど…」
パタパタとスリッパの音が聞こえて階段から降りてきたのは、
「あ、やっぱり」
「ほぁ、やぶぅ!?」
ぐったりした薮だった。
「うお、光と…伊野尾じゃん」
「もしかして奥さん産まれそうなの?」
「そー…陣痛長引いててさ…このままじゃ帝王切開になるかもって」
「あぁ…奥さん小柄だもんね。
てかいいのかよそば離れたりして」
「俺が使い物にならなすぎてキレた嫁に追い出された、へへ。
つか二人は?検診?」
「ひかるはね。俺は暇だから付き添い〜」
「そうなんだ。つか伊野尾久しぶりじゃん、旦那にはよく会ってたけど」
「その節はお世話になりました、まいどありっ」
なんで大ちゃんと薮が?って話を聞いてみると、お客さんなんだって。
.
検診が終わって戻ってみると薮はいなくて、いのちゃんだけが顔をあげた。
「おつかれ。どうだった?」
「あのね、性別わかった」
「おーマジ?え、山田より先に聞いていいの?」
「ん。いのちゃんとこと一緒だよ」
「男の子!?…っはは、すごいね!
ねー、男の子だって!お友達だ」
お腹を撫でて話しかけるいのちゃんにつられて、俺もいのちゃんのお腹を触る。
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Shee.(プロフ) - たべっこさん» はじめまして。コメント励みになります、ありがとうございます! (2018年10月17日 6時) (レス) id: 8e67ef454c (このIDを非表示/違反報告)
たべっこ(プロフ) - ありいののやりとり可愛くてにやけながら読んでます!続き楽しみにしてます! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 330ed6c9f4 (このIDを非表示/違反報告)
Shee.(プロフ) - ちかちゃんさん» ありがとうございます。まだまだ続きそうですのでよかったらお付き合い下さいね! (2018年10月13日 2時) (レス) id: 8e67ef454c (このIDを非表示/違反報告)
ちかちゃん - やまひか大好きなので、結婚してるとか夢のようです。ありがとうございます。 (2018年10月13日 0時) (レス) id: be1cc30b1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shee. | 作成日時:2018年10月4日 20時