貴方に近づきたくて【ハイキュー･及川徹･岩泉一･牛島若利】 (ページ5)

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牛島side

いつだってバレーだけに力を注いできた。

そんな俺にはAという幼馴染が居て、幼いころから共にバレーをしてきた。
中学からはマネージャーとして、多方面から部を支えてくれた。
成績も優秀で教養もあり、茶道・華道・英会話・ピアノ・体操。やらせれば何でもできるやつだった。そんな頭脳明晰で教養を持ったAを両親は将来は俺の嫁にと思っていたようだが、俺らにそんな気は全くなく仲のいい幼馴染としてこれまで過ごしてきた。
俺の隣にはいつもAがいて、それがこれからもずっと当たり前のように続いていくと思っていた。

A「若利、あのね。私春から青葉城西に行くことが決まったんだ。」

俺の思考回路は一瞬停止した。
己の耳を疑った。

牛島「何故青葉城西なんだ。」

心の声はいつの間にか俺の口から言い放たれていたようで、Aの驚く顔が視界に入った。

県内でダントツに強いのは白鳥沢だろ？
中学でもそれを証明してきたし、これからも頂点は譲る気はない。
何故だ。何故青城に行くんだ。

俺が必ず全国の頂点へと連れて行ってみせるのに。

何だか心の中に雲がかかるような不思議な気持ちを感じた。
今までに感じたことのない気持ち。
だが、進路を決めたAに口出しする立場でもない俺は、結局は「そうか。」なんて言葉しか言えないのである。

俺はAの見せる太陽のような笑顔がたまらなく好きだった。
この好きというのはlikeの方だろう。
何だかその笑顔を見ると元気になれる、そんな気がした。
あの笑顔を見るために空へと飛びボールを叩き落してきた。勝てばあの笑顔が見れる。
これが俺の力の源だった。

あっという間に中学の卒業式を迎え、Aと過ごす学校生活も終わりが見えてきた。

卒業式の帰りに歩きながらあの笑顔で俺にこう言ったんだ。

A「若利！頂点で待っててね。必ず倒しに行くから！」

俺らしくもなく不意に心臓が跳ね上がるような感覚を覚えた。
この時に俺は気づいてしまった。
この雲がかかるような不思議な気持ちと、心臓が跳ねるような気持ち。

あぁ、俺。Aの事がと幼馴染としてではなく、一人の異性として好きなんだと。

俺の愛しい人が俺に挑戦するならば受けてやろう。

牛島「あぁ、望むところだ。」

そう言って俺たちは初めて違う道を歩み始めたのであった。