ハロウィンの夜に☆３ (ページ9)

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ぱーん。
ぱーん。

櫻井の柏手を打つ音が響く。

目を閉じ両手を合わせた櫻井が口を開いた。
そこから出た声は低く低く、反響を起こすような音。

「おぉおおぉぉおぉぉおぉぉおおぉおぉおお」

わんわんと響かせるような声に、相葉は聞き入った。

櫻井の声で湖面がさざめく。

「おわしまします竜神よ、我が声に答えたまえ。」

櫻井が言うと、湖面の波は大きくなり、やがて
中心が隆起すると、そこから竜神があらわれた。

「白龍公でいらっしゃったか。」

「これはこれは、婿どの。久しいのう。
　今生で会うは初めてか。」

「左様。実は頼みがあるのだ。」

「そこの男の事か？」

竜神の問いかけに櫻井が頷く。
相葉は、ただただガタガタと震えていた。
初めて見た竜は真っ白で大きく、威厳があった。

「いかにも。この者は私の大切な仲間。
　セイレーンに連れていかれたらしい。」

「うむ。
　確かに。セイレーンに魅いられたか。魂はまだ
　そこにあるが、力がない。
　おそらく、子を産むために奪われたか。」

櫻井が頷く。

「ふむ。本来はまだ、死する時ではないようだ。
　だが、この者を助ける方法はない。」

「いや、あるはず。」

「あれはならぬ。人ではなくなる。だが……。」

竜神はじっと櫻井を見つめた。