愛を知らない夏 ［Taiga］

キスだけ (9/13) ページ42

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彼に弄ばれるまま、

必死に追いかけて、追いつかなくて





どんどん消えていく理性と

迫ってくる快感。





唇がゆっくりと離れて、
2人の間には、透明で細い銀の糸。



じ、と見つめる大我の視線。

急に身体中が熱くなって、大我がクスッと笑った。

ああ、言われなくたって、
「顔、まっか」


その言葉を聞いて、
さらに芯から熱を持つ体と、溢れる心。





"かわいい、"

無責任に、私の耳元で
その言葉に吐息を添えて。






唇が離れて、
やっとまともに呼吸ができると思ったら


首元をカプっと食まれて
それだけで、身体中に快感が走った。



その、長い前髪の隙間から
チラッと私を見て



下に、そっと手を忍ばせた手を止めて






「キスだけで、イキそうじゃん」

と言った。





彼が言ったとおり、

初めて、キスだけで、絶頂を見た。




その瞬間に向かう途中、怖くなって大我のTシャツをぎゅっとつまむと

「怖い？大丈夫だよ」と
小さい子に言い聞かせるような声で、表情で、言った。






優しいくせに、


頂点を迎えて、未だ落ち着かず息の整わないわたしの体をゆっくりと指先で弄ぶ。

さらに過剰に反応してしまう私を見て、楽しんでいるみたいだった。



肌を色っぽく撫でるような視線と、
少し伏せられた長いまつ毛。

くすぐったい鼻筋と
わずかに開いた、桃色の唇。

隙間から、色気がだだ漏れ。






…こんなときに。




大我の、この顔を見ている人が

他にもいるんだと思うと、急な嫉妬心やら切ない気持ちが、涙になって溢れた。



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