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声も、手足も、瞼すらも自ら蓋をしてしまった私に、残っているのは聴覚だけで、


風を切る音が聞こえる

それも相当のスピードで。


ああ、短い人生だったなと覚悟した時、

私を襲ったのは、銃でも、刃物でも、魔法でもなくて

大好きな彼の香りと、温かな体温だった。


驚きすぎて硬く蓋を閉じた筈の瞼が、これでもかというほど見開いて、

一番最初に視界に入ったのは、真顔の彼と、彼の美しい翼と、真っ青な空で、

自分が今、彼に抱き抱えられて飛んでいるのに気がつくのは、そう遅くはなかった。



『…マルフィ……、?』



声が出る、

手足の魔法もいつの間にか解かれている。



「なんだい?」



そう答えてくれた彼は、恐ろしい程美しい笑顔で、

ああ、これは相当怒っているなと、他人事の様に思った。



『あの…どうして?マレフィセント様の所に帰ってたんじゃなかったの?』

「勿論さ、だから君と約束があるとマレフィセント様に言ったら、早めに戻る様にと言って下さったんだ。だから…」



彼は一度言葉を切って、スッと真顔になってしまう。



「だから、私が一番最初に、美しく着飾った君に会いたくて戻ったと言うのに、君は変な輩共に囲まれているし、酷く哀しそうな顔をして泣いている。」



こんなにも許せないことがあるかい?

そう言って下を向く彼に習ってみると、丁度先程の彼ら(ヴィランズ)の真上にいた。



「君が誰のものなのか、どれほど大切にされているのか、あんな輩共が手を出して良い相手ではないという事をしっかり理解して頂かなくては。」



彼の瞳の奥が、深い緑色に光る。

酷く美しく、何も映さないその瞳が、私は好きだった。


途端に緑色の炎が高く上がって、逃げようとする彼ら(ヴィランズ)を取り囲む。

その炎は円形になって、じわじわと狭まっていく

恐ろしく残酷な光景に見向きもせずに、



彼は私の顔を覗き込んで一言、



「こう言うのを、高みの見物というのだろう?」



そう言って、いつもの温かな笑顔で、ただ私を強く抱きしめるだけだった。

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作者名:浅葱 | 作成日時:2018年11月20日 23時

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