高みの見物 (鴉) ページ4
拝見、お父様お母様。
私は今、超絶大ピンチです___
この始まりは些細な事で、恋人であるマルフィから
「久方ぶりにデートでも如何かな?」
と、お誘いを受けた事である。
その日はいつも先に支度を済ませて、私を待っていてくれる彼が待ち合わせ場所に居なくて、
彼は事前に
「マレフィセント様からお呼び出しが掛かったんだ。時間には少し遅れてしまうかもしれないから、ゆっくりおいで。」
そう言っていてくれていたのだけど、リクルーティングで忙しかった彼との久しぶりのデートで、すっかり浮かれ気分だった私は、いつもより早く彼の姿を待っていた。
この行動がそもそもの間違いだったのだ。
突然、真っ黒のフードを被った男に声を掛けられた。
勿論私は丁重にお断りして、その場を離れようとしたのだけど、
気が付いた時には、一瞬でフードの男に囲まれてしまっていた。
いつの間に、
声にしようとした言葉は出て来ずに、息の音に変わる。
逃げ出そうとした足も、
抵抗する為の手も、ピクリとも動かない。
そうして冒頭に戻る…と言うわけである。
『(やばいやばい超やばい…この状況は絶対にダメなやつ…)』
生憎、彼はまだ敬愛するマスターの元にいるし、
いつ戻るかもわからない。
かと言ってここはタワー・オブ・テラーからも少し離れている。
他のリクルーター達の助けも期待出来ない。
きっと普段は、彼が護ってくれていたのだろう。
だから私は、自分がとても狙われやすい対象であると、気付かなかったし、そんな気配すらも感じなかった。
考えてみれば、あのマレフィセント様の手下である、
彼の一番近くにいて、
魔力を持たず、戦闘も出来ない非力な
ここで捉えられて、いたぶられるのか、彼を脅す材料として使われるのか、
それともこの場で殺されてしまうのか。
どの選択だって彼に迷惑を掛けてしまう。
瞳の奥から溢れる温かいものに気が付いて、
平和ボケしていた、
幸せすぎた事への罰だと、
そうであるとしか思えなくて。
暖かい想い出を忘れないように、
素敵な悪夢を見続けられるように、
ただそれだけを願って、
そっと、瞼に蓋をした。
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作者名:浅葱 | 作成日時:2018年11月20日 23時