case4:ウォヌ ページ5
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ピンポン
インターホンが鳴った。
時計を見ると11時を回っていた。
まただ。
ガチャ
「また来たの」
「きたよ」
だからなんで。
ヌナはよく家に来る。
なんの連絡も無しにだ。
会おうと連絡した日にはラインすら無視するから、
もっとたちが悪いかもしれない。
「おじゃましまーす、お酒買ってきたよ」
「前買ったの残ってる」
「あれ、そうだっけ」
まあ飲むだけ飲んでベロベロになって寝てますからね。
なんで来るのかは分からない。
ただそう言う、関係でもない。
本当に寝るだけなのか、駅から近いのか、なんなのか。
はじめは俺ばっかり期待して悩みもした。
でも今はもう慣れたもんだった。
「で、今日は？」
「あはは、バレてたか」
「まあいつもだからな」
さっきまで一緒にいた男の話だ。
ケンカをしてその足でここに来るのが、いつもだ。
「んっとに、良いのは顔だけだったわ」
「ヌナは顔しか見てないもんな」
「みんなそうでしょ」
「そんなことないと思う」
理解できないとでも言いたそうな顔をされる。
じゃあウォヌはどんな女がタイプなのよ、と強めの口調で問われる。
俺は
「優しくてふわふわした人」
「何それいねえよ」
「いるよ」
「誰よ」
「や、わかんないけど」
「いないじゃん」
なんで、怒るんだ。
もう疲れる。
だからこんな、ヌナみたいに恋愛にこなれたみたいなのは苦手だし、俺が誘っても無視なのに勝手に家来るし、男とケンカした時だけ来るし、それ以外の日はどうしてるとか全然知らないし、教えてくれないし、自分勝手だし、マイペースだし、
「ごめん言いすぎた、ウォヌも飲んで」
「うん」
コンビニの袋からビールを取り出して俺に渡した。
なのにすぐに謝っちゃうところとか、一応俺の分のビールも必ず買ってから来るとことか、玄関の靴はきれいに並べるし俺以外いないのに必ずお邪魔しますと言うところとか。
一体ほんと、なんだって言うんだ。
「ねえヌナ」
「ん？」
「なんで来るの？」
「やだ？」
「別にそう言うわけじゃ」
「ならいいじゃん、別に」
少しだけムッとして、言わないでおこうとしていたことを言ってしまう。
「俺だって男だよ」
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作者名：m | 作成日時：2020年4月4日 10時
