ミモザの花束を君へ(緑) 3 (ページ30)

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雨が冷たい

ロータリーから駅の中まではちょっとの距離のはずなのに長く感じる

"新大阪行のぞみ、8時ちょうど発、16番線"

電光掲示板に浮かぶ文字を横目で見て券売機で入場券を買う

駅の時計は7時45分をまわった

16番線のホームに駆け上がる

湿気でボサボサになった髪が顔にはりついてうっとおしい

茶色のハットと、普段はかけない黒の眼鏡

シャツと薄いカーディガンの上にジャケットを着て、くるくるとビニール傘をたたむ姿

『せんせ‥‥』

会えた

ただそれだけが嬉しくて

大「うおっ‥ちょ、お前びしょびしょやんけ!!」

人目も気にせずにその胸に飛び込む

大「な、1回な、１回離れて」

そう言うとサッとジャケットを脱いでその下のカーディガンを私の肩にかける

今まで着ていたぬくもりがそのまま伝わってきてあたたかい

抱きしめられてるような、そんな感じがする

『‥‥ﾊｯｸｼｮﾝｯｯ』

大「え、風邪ひいたんか？

ちょっと、待っとけ」

待って、と言う前にホームを走っていく

人混みの中に紛れて後ろ姿が見えなくなる

『あと、少しなのに』

なんでどっか行っちゃうんだろ

モヤモヤした気持ちが湧き出した頃

大「ん」

少し息の切れた大倉先生が手にあったかいお茶を持って帰ってきた