ミモザの花束を君へ(緑) 2 (ページ5)

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日が完全に沈んでしまっても

夏の夜はまだ暑い

浴衣1枚とは言え少し汗ばむ

先にお風呂に入ってしまったのがもったいなく感じる

浜辺に続く階段をおりて亮に近づく

砂をふむ足音が聞こえたのか、亮は振り向く

亮「なに‥」

『ううん

ちょっと出てきたかっただけ』

亮「‥‥2人は？」

『部屋にいると思うよ』

ぽつりぽつり言葉が出ていく

そうさせるのは夏の夜の海の雰囲気に私たちが飲まれているから

『なんかあった？』

亮「‥‥」

『‥‥』

ザザっと波が打ち寄せる音がよく聞こえる

亮「あのさぁ」

思い口を開いたのは亮

亮「大倉先生とデートって何」

私をじっと見据える目に私は、戸惑う

『え‥‥と』

亮「俺見てん。お前の手帳

‥‥消してた跡も」

やっぱり、見られてた

混乱する私の頭の中は

どうやって正直に話そうかということじゃなくて

どうすれば、誤魔化しきれるのか

それだけに考えを巡らせていた

『あの、ね‥‥

友達が‥‥大倉先生とそういう仲で

私のやつに冗談で書いたの！

デートの所は消せたんだけど、他のところはペンで書いたから消せなくて！

そう！だから違うよ‥‥

私と大倉先生は亮が思っているような関係じゃない‥‥』

自分でも苦しい言い訳だったと思う

なんて下手くそな嘘なんだろう

亮「わかった」

『亮‥っ』

ふいに亮が私を抱きしめる

それは友達としてのハグ

亮「うん、信じるから」

そう言うと私の首筋に流れるものがあって

それが涙だと気づくのには時間がかからない

私から離れて立ち上がった亮のまつ毛がキラキラしてたから

そして、亮は旅館の中に帰って行った

私は、しばらくそこでただずんでから部屋に戻った

ごめんね、私は君に本当のことを言えなかった