6 ページ7
Side Yuri
その日は、店の締め日だった。
僕はまだ売上管理までは任せてもらってないけど、各店からの書類は受け取ったりする。「noche」からは店長の光くんではなく、雄也が持って来る事も多かった。
光くんは宏太の同期で、あの慧ちゃんでさえ気を遣うほど、仕事に対しては厳しいらしい。
僕は小さな頃から知っているから、そんな印象もないけど、慧ちゃんは光くんの事をひそかに「風紀委員長」と呼んでいる。昔、雄也に言い寄ったスタッフを、即刻クビにしたのがきっかけらしかった。
そんな光くんか雄也か、今日はどちらが届けに来るんだろう。内心そわそわと落ち着かない僕に、宏太が手招きする。
「侑李、急ぎで買い物頼める？」
「いいよ、なぁに？」
手渡されたメモには、いくつかの雑貨と最後に「ココア」の文字。コーヒーを好まない雄也の為に宏太が常備しているもので、扱う店が限られるこだわりの品だった。それだけで雄也が来ると確信し、一気に鼓動が跳ね上がる。
雄也に会えるのは、バイト代より嬉しいご褒美だった。この為に働いているような僕は、頭の中で必死に話題を選別する。
貰ったばかりのお土産のお礼、掲載された雑誌の感想、大貴の新作メニュー、何をどれだけ話すチャンスがあるかわからない。叶うなら、髪を切ってとねだりたい気持ちもあった。
そんな事を思案しながら急ぎ買い物をし、店まで戻る。足の速さには自信があるけど、今日はかなり時間を短縮出来たような気がする。
少しでも雄也と話す時間が増えれば…と息も整わないまま中へ入ると、何やら言い合う声が聞こえた。
「どうしてダメなの？」
「式は土曜の昼だろ、すぐ帰って来い。」
「だから日曜に帰るから。今さ、いい波が来てんの！ホント最高なんだよ！」
「いい波って何だよ、漁師かよ…とにかく帰って来い。休みならこっちでやるから。」
「だからあっちで休みたいんだって！」
雄也が海が大好きなのは相変わらずで、最近はサーフィンが楽しくて仕方ないらしい。
向こうに行く度、長居したがるのを毎回宏太から止められている。
「社長にOKもらったもん！」
「母さんはマジで雄也に甘すぎんだよ、ダメなものはダメだかんな！光に言うぞ？」
「う…」
光くんがどれだけ怖いのか、そこで雄也が押し黙る。それでも納得は出来なかったんだろう、「もういい！」と宏太から顔を背けた。
「雄也！」
そのまま出て行こうとした雄也を、宏太が背後から抱きしめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みもたま(プロフ) - コメントありがとうございます！お店の開店に超豪華なお花を届けて頂いたような恐れ多い心境です。閉店にならないように頑張らねばー！（限られた品しかない、マニアックな店ですが…） (2019年11月8日 23時) (
レス) id: f91d6da0d1 (このIDを非表示/違反報告)
Purple Swallowtail(プロフ) - 移行おめでとうございます！高校時代も含め今のみんながどんな風になっているか楽しみにしてます！大ちゃんも登場(^ ^) (2019年11月8日 18時) (レス) id: 73ae1288ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みもたま | 作成日時：2019年11月8日 18時
