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噂をしていれば照が撮影から戻ってきた。今日は阿部とペアを組んでいた。やっぱりどこかご機嫌なのはAの影響がとても大きい。
そのままソファに座り、自分達が載っている雑誌を捲ってニヤニヤニコニコ眺めている。
「あれ重症だね……」
「なっ」
でも照が蕩けそうなほどニコニコしていることがどれだけ嬉しいか。俺はゴールのない片想いに一喜一憂する照を見守ってきた。
俺みたいなお調子者で恋愛賢者は相手が超がつくほどの鈍感で異性として見ていないのなら、ハグしてチューすれば……、なんて思うけれど、照は根っからの真面目だ。色々あったけれどクソ真面目故に奥手を拗らせてしまった。
「でもあれくらいでいいんだよ、照は」
「いいの？」
「12年思い続けたんだからな。通じ合ってからの年数以上に苦しかった時間が長いから幸せそうだとこっちも嬉しいのよ」
だから照が嬉しいと俺も嬉しい。Aが元彼と付き合い始めた、と報告してきた日、照の酷く傷ついた表情が脳裏に焼き付いている。今にも溢れそうな涙を一生懸命堪え、必死でおめでとう、を絞り出した姿。翌日現場に現れた照は誰がどう見ても泣いたのが分かるくらい、目がパンパンに腫れていた。
その頃からAを強く愛していた。無理に彼女を作ってAにおめでとう、と祝われた時の傷ついた表情も忘れられない。
「ふっかさんって照くんとAちゃんのカップル大好きだよね」
本当に好きな人と付き合えて毎日が豊かになった照は今が1番かっこいい。照と付き合ったAはどんどん美人度が増している。そういう意味で“いわふじ”には互いの魅力を10倍増しにする不思議な力が働いていると思う。
「何を当然のことを」
「そんなに強く言い返さないでよ……」
つい強く当たってしまった。ラウがしょぼくれて軽く反省する。
「なんつーか、あいつら見てると応援したくなるのよ。俺が色々知ってるってのもあるかもしれないけどさ？」
「ふっかは何を色々知ってんの？」
「ん？」
俺達の会話に照が混ざる。
「それはもう色々よ。深澤を舐めてもらっちゃ困る」
照が流した涙は今の幸せや笑顔のためにある。Aもまた苦しい思いをさせた分、照を全身で受け入れてくれている。
「別に舐めてねーし」
「そう？」
あはっ、と微笑んだ照は再び雑誌に目を向けた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
