Beautiful Moon 3rd (ページ43)

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はじまりがあればページ43

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始まりがあれば終わりがある。撮影がある日はずっと楽しかった。Aを突き放すシーンがあると心が痛くなったけど、これはドラマ、俺は辰之助だと言い聞かせた。そんな日々も今日で終わり。

『終わったー！』

「お疲れ様」

最後のカットを撮り終えて俺達のドラマはオールアップした。

『照もお疲れ様。座長頼もしかった！』

Aは満面の笑みを浮かべてそう言った。初めてのドラマの座長はいいことばかりではなく、出演者皆に支えられた。

落ち込んでいる時も、体の調子が整わず思うように動けない時も、照なら、照くんなら大丈夫だと励ましてくれた。

今の照は休むのが仕事。こっちはどうにかなるから休んできて。厳しくも暖かい励ましにも救われた。

「こちらこそ、Aがヒロインで頼もしかった」

思わずグッと来て泣きそうになるのを堪え、俺はAに笑いかけた。最後は笑顔で終わりたかった。

「ありがとう」

Aはピンクのブーケをギュッと抱き締めた。そんな彼女は既に次の仕事が発表されている。今回は土曜日深夜帯の30分ドラマでヒロインだったけれど、4月からは金曜日プライム帯の1時間ドラマで主人公を務める。

3姉妹の次女、しっかり者で仕事に邁進していたら気づけば20代最後、元彼や友人はちゃっかり結婚や出産をしていて心をかき乱される。そんな役柄だ。

「終わるの寂しくなってきた……」

そんな俺も4月から舞台が始まる。Aの撮影が始まっているように、俺も舞台に向けて本格的な打ち合わせが始まっている。まだ世の中に公表していない仕事もあってなんやかんやで忙しい。

『始まりがあると終わりがあるし、終わりからは逃げられないよねえ……』

「Aは寂しさとかないの？」

どこの束縛が激しい彼女なのか。俺が独占欲強めなのは否定できないけど。

『ないわけじゃないよ』

でもね、とAは微笑む。

『ここでの経験を胸に次の場所で輝きたい気持ちが強いの』

前向きだ。清々しいくらいの笑顔に自然と下向いた気持ちが上向いた。

「強いね」

『私のお芝居を待ってる人が沢山いると思うし、ここで成長した新しい自分を見てもらいたいじゃん？』

4月から始まるドラマや舞台。今回ファンになった方々にも見てほしい。終わりがあるから始まりがある。明日の俺は今日よりもっと強くなれる気がした。