☆ ページ42
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こうして私達は無我夢中でチャンバラ遊びをした。お父さんに習ったのだろうか、きょもくんは異常に剣使い……というか木の棒の扱いが上手かった。
兄や近所の男の子達と何度も戦ってきたけれど、群を抜いて上手かった。遊びのつもりなのに2人して白熱し、脚や腕に小傷を作っている。
“Aちゃん、すっごくつよいね……”
“きょもこそ、手強いよ……！”
絶対に勝つ。互いに負けず嫌いで譲らない。夢中で戦い続けた結果、私達は大人からの注目を集めていた。出演者やスタッフさんからの微笑ましい視線が刺さりに刺さって、気づいて互いに恐縮してしまうくらいだった。
“ま、また今度やる……？”
“うん……”
私は決してキャピキャピした可愛らしい女の子ではなかった。誰もが認めるお転婆で、おままごとよりも鬼ごっことチャンバラが大好きな男の子に近い女の子だった。
同級生に比べると身長も高めだったし、恋には縁もゆかりもないとばかり思い込んでいた。まさかチャンバラがきっかけで“きょも”の忘れられない人になっていたとも露知らず。
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きょもと私は小学生の時から互いを知っている。照との出会いもかなり早かったけれど、それよりも早く出会っている。
しかも照とは1度疎遠になったのに、きょもとは繋がっていた。お父さんと一緒に毎年ピーターパンを観劇して楽屋にまで来てくれたし、怪我による手術で入院していた時も家族でお見舞いに来てくれた。
“怪我治ったらまた一緒にチャンバラやろうね”
“うん。絶対やろう”
“Aちゃんが元気じゃないと、大我つまらなさそうなんだよ”
“お、親父っ！”
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「何やってんの？」
拗ねを孕んだ低い声が背後から近づいた。
「おっ、岩もっちゃん！ お疲れ！」
「お疲れ。で、2人きりで何してるんですかー」
「たわいもない話だよ」
「怪しい……」
スーツ姿のボディガードはムスッとしたまま私達を一瞥した。
「相変わらずヤキモチ妬きなんだから」
「だって、大我の初恋Aなんでしょ？ 危ういじゃん……」
照は私が関わるほぼ全ての男性に嫉妬する。それは私達の付き合いを知るほとんどの人が理解している。
「危うくないって。俺は岩もっちゃんとAちゃんの絡み好きだし」
きょもはゆっくりと席を立つ。
「じゃっ、また構ってよ！」
そして颯爽とどこかへ歩いて行った。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
