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『あと根本的な部分だけどさ、』
「うん……」
『10年以上好きで、他の出会いを求めてもやっぱり諦められない相手を本当に諦められるの？』
痛いところを突かれた。何回も挫折してきた経験があるから分かる。多分俺は諦められない。
『無理に諦めない方がいいよ。諦めたり逃げたりするんじゃなくて届けなきゃ。10年も好きなら相当一途だし伝えないともったいないよ。胸の中に閉じ込めるだけじゃ照が苦しいだけだよ？』
照がしんどいの嫌だし、と照れくさそうに笑った。
『私的に幸せになってほしい人だからさ、照は』
そう思うなら俺を幸せにしてほしい。自分の手でAを幸せにしたいけど、俺が幸せになるにはAの存在が必要不可欠だ。
『諦めて逃げて、気づいた時には相手は別の誰かのものになってる。その時の後悔って、今照が感じてるものよりも遥かに大きくて喪失感にも苛まれると思うなぁ』
Aが他の誰かのものになる。考えるだけで胸が痛い。Aに彼氏ができたと聞かされた時、1晩中泣きじゃくったのを思い出す。男なのに失恋で泣くなんて情けない。そう思いながらも溢れる涙は止まらなかった。泣き疲れて寝落ちして、浮腫んでパンパンの顔と傷心を引きづりながら現場へ向かったんだっけ。
『嫌でしょ？』
「……絶対嫌」
『やっぱり』
我慢しなくていいんだよ、とAは笑った。
『思ってるだけじゃ相手には伝わんないし、本気でアプローチしてみたら？』
「アプローチ？」
『押してダメなら引いてみるって言葉があるけど、駆け引きよりも照のまっすぐな気持ちが相手を動かすんじゃないかな』
「まっすぐな気持ち……」
『あくまでも私の個人的な予想だけどね？』
俺はまっすぐにアピールしたことがあっただろうか。妥協して他の女の子を相手にすれば簡単に落ちてくれたけど、A相手にやった記憶がない。
『10年以上気づかれないんだから照は表に出さなさすぎだし、相手も相当鈍感なんだろうし、直球勝負だよ』
自分で自分のことを鈍感と言っている。認めたも同然で少し頬が緩んだ。
「直球勝負か……」
俺は決して恋愛に慣れた男じゃない。遊んできたけれど、長い人生を考えた時に愛する誰かと過ごしたい。そしてその相手はAじゃなきゃ嫌だ。
『大丈夫、照なら叶えられる』
その言葉、本気にするよ？
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
