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発熱したAはめっきり食べなくなるから無理にでも食べさせる。すりおろしリンゴやみかんゼリー、加糖ヨーグルトのような胃に優しく消化に良い甘い物であればベスト。しっかり食べさせたい時は素うどんか卵がゆで対応する。薬は粉でも錠剤でも嫌がらないから看病はしやすい。
まずは少しでいいから何かを食べさせる。
「俺が買ってきたのミックスゼリー……」
『照が選んだものは食べられるよ……？』
不調時のAの説明を聞いて愕然とする。でもAは弱々しく目を細めた。いつもハキハキ喋るAがふにゃふにゃで蕩けそうなほど柔らかく話す。
『照が選んでくれたから食べれる』
熱がこもって潤んだ目は可愛いけれど本調子じゃないのも明らかだ。
「うふっ、愛の力ね！ 親にも知らないことがあったみたい」
おばさんは退散しなきゃ、とお母さんは楽しそうに荷物をまとめる。
『お母さんありがとう。大晦日実家帰れなさそうでごめん』
「いつでも帰れるんだから謝らないの。病人はとにかく治すことだけ考えなさい」
既に病院に行っていてインフルエンザやコロナのような感染症ではないと診断されているらしい。ただ風邪の症状が出ているから、これ以上酷くならないようにとにかく休ませる。
「照くん」
「はいっ！」
お母さんから教わったことを反芻していると、声をかけられて反射的にピクリとした。俺の肩は上がりきっていたと思う。
「Aのことよろしくね？」
「もちろんです」
「分からないことがあったらいつでも連絡してきてね？ Aを育てた親として教えられることは全部教えちゃうから」
やっぱりチャーミングで楽しい人だ。またもウインクを飛ばしたお母さんはそのまま玄関へ向かった。
横になってウトウトするAに代わってお母さんを見送る。Aより少し身長の高い彼女は振り返り、Aそっくりの笑顔を向けた。
「照くん」
「はい」
「最後に1つだけ。あの子、熱を出すと寂しがり屋になるの」
だからなるべく1人にさせないであげてね、と囁いた。
「分かりました。大晦日まで仕事はあるんですけど、なるべく早く帰ってそばにいます」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
「照くんもよいお年を迎えてね！」
「はい！ お母さんもよいお年をお迎えください。お父さん達にもよろしくお伝えください」
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
