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去年までのコロナ禍でもコロナに感染せず、それ以外の感染症にも罹らないように予防や体のメンテナンスに抜かりないAが体調を崩した。
仕事に穴を開けないように気張り、仕事納めをして気が抜けたタイミングでダウンする。2023年の溜まった疲れが爆発したのだろう。
「1人にさせるわけないし」
体調不良でも食べれそうな食べ物と薬をスーパーやドラッグストアで買って家に帰る。
帰ってこないで、なんて突き放されようが聞いてやらない。解錠し、玄関のドアを開けて中に入る。見知らぬスニーカーが1足玄関に並んでいる。女性ものだから恐らく彼女が来ているのだろう。Aをチャーミングな女性に育てた人が。
寝室を覗く。ベッドに人影はない。どうやらリビングにいるらしい。
「ただいま」
『え!? おかえり……』
マスクを着用し、額には熱冷ましシートが貼られている。Aはソファーに横たわっていたらしく、勢いよく起き上がった。
『帰ってこないでって言ったのに……』
「病人を1人にさせるような馬鹿な彼氏じゃありませーん」
パジャマ姿で目が血走っているのを見ると本当に体調が悪いらしい。マスク越しに見える頬は真っ赤で確実に発熱している。
「ね? お母さんの言う通りだったでしょ?」
Aにそっくりな女性がAに向かって微笑んだ。スラリとして背筋はピンと伸びていて若々しい。Aのお姉さんだと言われても疑わないくらいだ。
「照くんは絶対に帰ってくる。どうにかして原因を探って、あなたを助けようと頑張る子なのよ」
今も昔もね、と女性はウインクを飛ばした。Aが時折見せる癖は女性……お母さんの影響が大きいのだと思う。
「だからお母さんもパパも照くんにならAを任せたいと思うんだから」
病人は寝てなさい、とお母さんは体を起こしたAを再び寝かせた。俺を呼ばない代わりにAが助けを求めたのはお母さんだった。
「照くん、突然押しかけてごめんねぇ?」
「いえいえ。こちらこそ看病ありがとうございました」
Aと出会った中学1年の初夏、俺はお母さんとも出会っていた。高身長でモデルのように美しい。高嶺の花かと思いきや底抜けに明るくて親しみやすい。いつ会っても優しく接してくれる。
半同棲が始まる前に挨拶に伺った時も、お母さんはとても喜んでくれた。
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2023年11月29日 19時