☆ ページ37
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今日のリハが終わって再びスマホに向き合う。俺がスマホに固執することはほとんどないから、舘さんに加わって康二も気にかけてくれる。
「Aちゃんどうしたんやろ……」
“お嬢のAちゃんがピンチらしいから巻きで終わらせよう！”
俺達は舘さんの一声で驚異的なスピードでリハを終えた。普段ならふざけてしまう所も真剣に取り組んだ。無駄を一切削ぎ落とし、マネージャーが戸惑うほどの集中力だったと思う。
皆がみんなAの存在を認めてくれている。大切にしてくれる。改めてAの慕われ力に感心する。
「本当は1人で抱えきれないピンチなんだと思う」
「心当たりはないの？」
変わったこととか、と舘さんが聞く。
「今日の朝、昨日の夜、その前、些細なことでもいいから変わったことはなかった？」
再び頭を捻る。今日はとにかく頭を使う日だ。
「そうだなぁ……」
昨日の夜は特に変わった所はなかった。仕事納めもしているし明日この前できなかった大掃除の続きをするぞ、と意気込んでいた。
「ハグした時にちょっと熱かった」
「俺何聞かされたん？」
「康二、静かにして」
「なんでやねん」
俺は至って真剣だ。昨日、抱き締めて寝た時に少し体温が高かった。その上、いつもならすぐに受け入れてくれるハグも最初は拒まれた。無理やり抱き着いて寝たけれど。
「あと俺が家出る時に起きてなかった……」
俺も弱いながらそこそこ早く起きれるようになったけれど、Aは元々が強いから絶対に俺よりも早く起きて朝ご飯を作っている。
でも今日は俺が出るのも気づかず、見送りもないくらい深く眠っていた。寂しい代わりにレアな可愛い寝顔が見れたけれど。
「もしかしてA、体調不良……？」
諸々の変化を口に出せば自然と答えが出る。特に変わった点はないと思い込んでいただけで、昨夜は風呂上がりに喉の調子が悪いと言っていた。Aは歌手としての活動もしているから喉の不調には特に敏感だ。
可愛いと思った寝顔も頬が火照っていた気がする。ハグをした時に熱かったのはあの時既に熱が出ていた可能性がある。
「……風邪かもしれない」
「じゃあますます放っておけないね？」
今この時間も恐らくAはしんどい思いをしている。そう思うといつも通り帰る以外何もない。俺は手早く帰り支度を済ませた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
