1番好きな ページ33
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3ヶ月半に渡る長い撮影。3人や他のキャスト、スタッフさん達と一丸となって作り上げてきたドラマがオールアップを迎えた。残暑厳しい季節から始まった撮影は今やダウンジャケットやカイロがなければ耐えられない。
『終わったぁ……』
最終回の放送日まで続いた撮影。色んなことがあったけど、最後に残るのは達成感と別れの寂しさだ。
家に帰ると照が出迎えてくれる。
「お疲れ様」
『ありがとう』
役のイメージに合わせた青や水色、白い花のブーケ。散りばめられた黄色や薄い緑が明るくも引き締まった印象にさせる。
『寂しいな……』
リビングに入ってソファーに座り、花束を抱き締めると3ヶ月半の思い出が鮮明に蘇る。
昔馴染みの松ちゃんとドラマでの初共演が叶って嬉しかったこと、美桜や楓珠が面白くて真面目で可愛い人達だったこと。撮影は真面目に真剣に、それ以外は楽しく過ごせて現場に向かうのが毎度楽しみだった。撮影以外の時間も声が枯れるほど話し、沢山笑った日々が既に名残惜しい。
『オールアップの時、終わりたくないって思っちゃった』
気負わずにいられたのは3人の存在があったからだ。4人で囁かな忘年会を計画するまでに仲良くなれた。本当に尊くてかけがえのない時間を過ごし、大切な友人が増えた。
「終わりたくない、か……」
明日からは別々の道を歩む。それが寂しくて仕方がない。いつもは清々しく切り替えられるのに、今回はそうはいかないようだ。完全に“すき花ロス”に陥っている。
「充実してた？」
『うん。すごくしてた』
とはいえ既に次の撮影が始まっている。
『明後日から本格的にボディーガード達とシェアハウスなの笑っちゃうよ。私半年くらい撮影なのかゲームしに行ってるのか分からない環境にいることになる』
「Aでもそんなことあるんだ」
照はふにゃふにゃ笑いながら私に抱き着いた。ブーケがローテーブルに置かれ、代わりに照が私の腕に収まる。大きな体は逆に私を収めている。
「それにしても花束、綺麗だね」
『ゆくえちゃんと私をイメージしてるんだって』
この花束を見たら心が安らぐ。私の中のゆくえがまだまだ生きているのを実感する。
『頑張って切り替えなきゃ。明日1日で切り替える』
「頑張ってくださいよ、弁護士さん？」
照はそっと体を起こし、大きな手で私の両頬を包んだ。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
