☆ ページ31
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「それだけじゃなくてさぁ、正直Aより俺の方が照と長い時間過ごしてるわけじゃない？」
「それはそうかも」
「なのに照は俺よりAが好きだろ？」
むくれて不貞腐れたふっかはジーッと俺を睨む。こいつ、俺の彼女ポジションを狙っているのか？
「いや、ふっかへの好きとAへの好きは全然違うから」
思わず冷静に返した。Aに恋をして、愛するようになった。人生を懸けて守りたい存在だし、何があってもそう易々と手放すような浅はかな気持ちで付き合っていない。ふっかも知っているはずだ。
「ふっかも彼女できたくせによく言うよ……」
でも俺はふっかだって手放すつもりはない。
シンメとして酸いも甘いも、苦しいも楽しいも、悲しいも嬉しいも一緒に乗り越えてきた。共に活動するようになってから今まで家族以上に同じ時を過ごしている。
「いやぁ、ねえ？ それはそうだ」
ムフムフニヤニヤ。ふっかの頭には最近付き合ったばかりの彼女の姿が浮かんでいるのだろう。サバサバして少し気が強いけれど、笑顔が可愛らしくていつもふっかの味方でいてくれるらしい彼女が。
「つーか俺の話なの！ 今は！」
「おーおー、そうだったそうだった」
反省していなさそうな能天気なふっかに戻った。落ち込んだり不貞腐れたりしているよりもふっからしい。
「で、2年がどうしたの？」
「もうすぐ付き合って2年だから何かしたいなって思ってんの」
「なるほどねえ」
ふっかの彼女ほどではないけれど、Aも割とさっぱりとした性格だ。人の痛みを自分の痛みに変えてしまうところがあるけど、基本的に小さいことは気にしないしドライなイメージもある。
「去年結構盛大にやってくれたからお返しもしたいし」
でも記念日はとても大切にしている。
去年の1年記念日の時は舞台の稽古中に怪我をしたにも関わらず、俺の大好物を作ってケーキまで準備していた。ご飯だけでなくプレゼントや手紙まで書いてくれていた。
どこか涼しげで冷たそうに見える彼女からの温かい思い。本当は怪我が心配だから何もしてほしくなかったのに、嬉しくて自然と頬が緩んで涙腺まで緩んで。本当に幸せだった。
「……指輪、重いかな？」
フッと頭によぎる。
「指輪？」
「ペアリングってやつ。重いかな？」
結婚するまで着けていてほしい。それは束縛になるだろうか？
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
