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「まさかこんな出会い方するとは思ってへんかったけど、藤井さんと顔を合わせることできてめっちゃ嬉しいです！」
実物めちゃめちゃ美人やし、と道枝くんはニコニコ可愛い笑顔を見せた。
「あっ、本性見せたな？」
「だって可愛いやん。30歳に見えへん」
こんな可愛い人と恋愛ドラマをやっていた広瀬アリスはどんなメンタルをしているのだろう。私には耐えられる気がしない。
「丈くんほんま狡い。俺もAさんのボディガードなりたかった！」
誰よりも大人顔だった道枝くんは急に年相応の男の子の顔に戻る。ギャップが凄い。年上キラーなのか、と疑ってしまうくらいだ。シレッとAさん呼びをするしそっちこそ狡い。
「でもほんまに狡い思ってんの俺やなくて照やろ？ 正直に言うてみ？」
「……岩本くん交代してほしい」
道枝くんはムスッと拗ねたようにほっぺを膨らませた。
『でもあの役はひか……岩本くんにしかできない役なんだよねえ』
ここで照呼びをしたら多分道枝くんはショックを受けるような気がする。道枝くんに知られてはいけない関係ではないけど、岩本くん呼びに変える判断はすぐにできた。
『同じように道枝くんの役は誰にもできないと思う』
「そう、ですかね？」
『そうだよ！ 仮に役交代してみてよ。道枝くんはいけるかもだけど、岩本くんに制服着る役はちょっと……』
悪口になっている。そういうことが言いたいのではない。
『とにかく今回の主役は道枝くんにしかできない役だから交代したいなんて言わないで？ マルス、絶対観るし楽しみにしてるから！』
パァーっと顔を明るくした道枝くんは元気よくはい、と返事をした。
「よっしゃ、頑張ろ！」
しっかり切り替えができる。まだまだ若い道枝くんが主役に抜擢される理由が分かった。
「あの、Aさん」
『ん？』
「丈くんに連絡先聞いてもいいですか？」
『いいよ。その時一言メッセージ送ってくれると助かる』
「分かりました！」
「戻ったら送るわ」
「頼んだで？」
連絡先を交換する約束を取り付けた所で、道枝くんの出番がやってきた。私の休憩も終わろうとしている。
「Aさんと丈くん、撮影頑張ってな！」
「俺は2番手か！ そっちもな！」
お弁当はすっかり冷えているだろう。これから歯磨きをして、メイク直しもしてもらわなくては。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
