憧れの人 ページ24
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「Aちゃん、紹介したい人おるんですけど今ちょっといいっすか？」
お昼ご飯のお弁当を食べていると、出番が終わったらしい丈くんがひっそりやって来た。
『いいけどご飯食べてからじゃダメ？』
「照が終わる前にお願いしたいっす」
『はぁ……』
もう終わりそうやから、と催促されて仕方なく蓋を閉める。丈くんに釣られて小走りでこっそり撮影スタジオを離れ、向かったのは別のドラマが撮られているスタジオだった。確か学園物だったはずだ。
「俺が呼ぶまで後ろに隠れてくれへん？」
そう言われて私は屈んで丈くんの後ろに隠れた。程なくして丈くんがみっちー、と声を張る。
「えっ、丈くんやん！」
こっちやで、と丈くんがブンブン手を振る先にいたのは“みっちー”と呼ばれる一際目を引く高身長の金髪くんだった。
「どうしたん？」
「今俺も撮影しててんけどみっちーおるってスタッフさんから聞いてん。やから連れてきたで！」
大きな目に爽やかな風貌。透き通った白い肌はみずみずしい。メイクの影響でキリッとした太眉に仕上がっているけれど、総じて可愛らしい感じの男性だ。
「大好きなAちゃんや！」
私が立ち上がると大きな瞳が見開かれる。目玉がこぼれ落ちるんじゃないかと心配になるくらいに。
「あ」
『初めまして……ではないけど初めまして。藤井Aです』
なるほど、丈くんはメンバーのなにわ男子の道枝くんを紹介したかったのか。真逆に何が何だかさっぱり分からない、と言った感じの道枝くんは硬直した。
「あっ、えっ……？」
「さっきから“あ”か“え”しか言わへんやん」
「当たり前やろ、憧れの人が目の前おんねんで？」
道枝くんは夢かな、と目をゴシゴシ擦った。顔に似合わず面白い子だなと思う。
『何回擦っても夢じゃないし、メイク落ちません？』
「ほんまや……、俺メイクしてました……」
なにわ男子は賑やかなイメージがある。その中でも冷静そうな道枝くんが若干取り乱している。
「なあ！ 丈くん……！ 俺心の準備できてへんねんけど……！？」
「準備なんてせんでええやろ。目の前におんねんから」
『丈くん分かってなさすぎだよ。もしよ？ もし突然大人に呼び出されて中嶋監督紹介されたらどうするよ？』
「……ビビる。めっちゃビビる」
『多分丈くんがしたことはそれと同じなんだよ』
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
