☆ ページ23
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そして俺の顔を見て誰だか分かったらしい理花子さんは心底驚いていた。
「SixTONESじゃない……」
『ふふふっ』
1言目にSixTONESが出てくるのだから相当好きなのだろう。その流れでSnowManもそこそこ見ていたのだと思う。顔を見て判別できるくらいだから。
『SnowManに揺らいだ？』
「揺らがないね。やっぱりSixTONESしか勝たんかなぁ」
『ぶはっ！ 敦貴も最近SixTONES推してるもんね？』
「お前っ、それを言うんじゃねえよ！ 照が拗ねるじゃん」
もう拗ねてます。妹であり幼馴染のお姉ちゃんがSnowManと付き合っているのに夫婦でSixTONES推しはしんどい。グッズ送りまくればこっちも応援してくれるかな。寝返らなくてもいいけどSnowManも何卒、という気持ちだ。
『じゃあまたねえ』
「またね！ Aちゃんありがとう！」
夫婦は改めて固く結ばれた絆を胸に帰路に着いた。下瞼に刻まれたクマは決して薄くはなかった。ほぼ初対面の俺から見ても痩せ細っていて健康的にも見えなかった。でも蓮ちゃんを慈しむ姿にも嘘はなかった。
これを機に敦貴くんは育休を取る決心をしたらしい。妻と娘のために奮闘する夫は世界一かっこいい。3人を見送り、少しの静寂が部屋中を覆う。
『でも赤ちゃんっていいねえ……』
Aはしみじみとソファーに座った。
「うん、可愛かった」
俺も隣に座る。現実に生まれたら可愛いだけじゃ済まされないのだけど、最終的に我が子は世界一可愛いに帰結する。
「正直俺にとって2人とも他人じゃん」
『うん』
「だから蓮ちゃんも他人だし血縁関係もないけど、めちゃくちゃ可愛すぎてヤバかった」
もし本当にAとの子供が生まれたらとろけるんじゃないか。男の子でも女の子でも甘やかしすぎて怒られるんじゃないか、と思えるくらい可愛がる未来が見える。
「……ねえ、A」
『ん？』
「将来結婚して子供できたら、俺めちゃくちゃ頑張るから」
不器用なとこもあるけど子供のためなら頑張れると思う。
「だから絶対無理しないでね」
ただでさえ完璧を求める人だ。Aが頼ってくれることは少ないし、むしろ俺が頼ってしまう。呆気に取られたAは一瞬目を点にした後、ふふふっ、と微笑む。
『うん。でもまずは照との時間を大切にするよ』
「それは……！ 大切にしてほしい……」
俺は少し恥ずかしくなった。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
