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子供が産まれるとどうしても子供にばかり目を向けてしまう。親の手を借りなければならないくらい何もできない時期なら特に。
でもAの話を聞いて思う。赤ちゃんを産んだお母さんだって心身ともにダメージを受けている。出産だけでなく妊娠してからずっとだ。
『さっきまで妹も来てたの。教えてもらうことばっかりだったけどいい経験になったよ』
休む間もなく子育てが始まる。子育てをして家事をこなして、夫との時間も作って……、と家庭のために忙しなく働けば休む時間などあるわけがない。
『赤ちゃんは大人が守らなきゃいけない。でもお母さんを守るのも大人だし、また頼られることがあったら積極的に協力したいな』
「……そうだね」
いつか自分にも家族ができる。一緒に家庭を築くのはAがいいし、A以外ありえないとさえ感じている。今日の出来事を忘れず、本当の意味で手を取り合う関係になりたい。子供ができたら俺にできる全てをやりきる。決意を新たに俺は蓮ちゃんの寝顔を眺めた。
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しばらく経ち、アツキ……敦貴くんとリカコ……理花子さんが病院から帰ってきた。
「今日はありがとな。Aのおかげで助かった」
『困った時はお互い様じゃん？ リンちゃんにも助けてもらったし、純粋に癒されたし2人とも頼ってくれてありがとう』
理花子さんは“産後うつ”との診断があったらしい。初めての妊娠出産、仕事が忙しい敦貴くんの分まで1人で頑張りすぎたのが要因で今後は敦貴くんを中心に、双方の家族と連携を取りながら子育てをしていくことになるそうだ。
『照が蓮ちゃん起こしたり泣かしたりすることもなかったし、ずっと眺めてたよ』
「何で起こして泣かせる前提なの？」
嫉妬深いし赤ちゃんに慣れているかと言われたらそうでもないけど。
「Aの負担が増えるもんな」
「敦貴くんまで……」
あはは、と笑う敦貴くんは理花子さんの腕の中で起きてご機嫌そうな蓮ちゃんのほっぺを指でなぞった。
最初に出会った時、高身長でイケメンでかっこいい高校生のお兄さんだった。歳を重ねてからも守るべきものが増えて、全身から頼もしさが見え隠れしていた。
『また頼ってね。理花子もしんどくなったら電話していいんだよ？ 照そっちのけで出るから』
「あはっ、分かった！」
理花子さんは清々しいほどの笑顔を見せた。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
