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『え？そんなに？』
Aは目を丸くした。当たり前だ。10年以上ってだけでありえない。メンバーでも加入組は知らないし、深い恋バナだって健人やシゲとしかやっていない。ましてや張本人に話せるはずがなかった。
「引いた？」
『引いてないけど、10年前ってうちら高校生じゃん』
そもそも恋バナそのものをまともにしていない。
「そうだよ。高校生の時からずっと好きで好きで仕方がなくて拗らせてる」
『憧れの存在とかじゃないの？ 手が届かないから美しい的な』
こう思われるのも至極当然だ。
「違う。憧れだけどちゃんと好きなの」
俺ははっきりと否定した。
「その子同い歳なんだけど全然同い歳に見えないの。いつ見て会っても堂々としてる」
『うん』
「隙がないししっかりしてる。事務所を超えて尊敬してる」
『うん』
「でもおっちょこちょいなとこがあるし、鈍感なとこもあるし、笑った顔は可愛いんだよ。笑わなくても可愛いんだけど」
Aは暑苦しいくらい好きじゃん、と微笑んだ。俺の胸はトクッと高鳴る。
『事務所ってことは芸能界の方なんだね』
うっかり口を滑らせてしまった。
「まあ、そんなとこ」
正直今はバレたくないけれど同い歳の業界人なんて沢山いるし、恋愛に関してAは鈍感なとこがあるから大丈夫だろう。事務所というワードから芸能人だと見抜かれたのは予想外だったけど。そういうとこは妙に鋭い。
『でも何で好きなのに付き合わないで違う女の子達と遊んだりしてるの？』
これもまた真っ当な疑問だ。自分でも思う。どうして俺はAが好きで好きで仕方がなくて、本当は今すぐに抱き締めたいくらいなのに回り道ばかりしているのだろう。
「好きだから。好きだから付き合えない」
『好きだから？』
「相手親友なの。近すぎて今の関係壊したくないし、もし振られたら立ち直れないし、俺なんかが隣にいていい相手じゃない……」
幼い頃から華々しい芸能生活を送ってきたAの横に並ぶのが自分なんかでいいわけがない。泥臭い芸能生活を送る自分がAを引き立てられるはずがない。
「別の女の子と付き合ったら好きじゃなくなるかなって何百回も思ったよ。この前の記事の時も心が折れてた。だから新しい出会いを求めて合コンに参加したの」
そして俺は自らの失態を世に晒された。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
