君の彼氏になりたい�� ページ1
·
10分くらい経っただろうか、Aがコンビニから戻ってきた。ボタン1つでガチャッと鍵が開く。
『ただいまー』
「おかえり……」
週刊誌を盾に使われたことで俺は再びどん底に落とされた。そうか、自分は今狙われているのか。自覚が足りなかった。Aの誘いに乗ったというのはAを危険に晒したも同然だ。俺はなんてバカなんだろう……
「痛っ」
急速にネガティブ思考に落ちる。それを食い止めたのはしっぺだった。
『なーに考えてんの？』
どうせ余計なこと考えてるんでしょ、とAはレジ袋の中から三角形の紙に包まれた温かい食べ物を取り出した。
「肉まん……？」
『こんな時間だけど、こんな時間に食べると美味しいもの買ってきちゃった』
へへっ、と悪びれる様子もなくAは早速包み紙を開き、肉まんを頬張る。
『美味っ！』
確信犯だ。俺は鶏肉以外の肉があまり得意ではないのに、目の前で美味しそうにモグモグされるとお腹が空いてくる。
正直最近は食欲が沸いてこない。今日なんて家で口にしたのがプロテインとチョコレートくらいだから、空腹でもおかしくないのだけど。
『照はチョコレートとココアね？ 甘い組み合わせだけどいい？』
「ありがとう。すげえ嬉しい」
家にストックを置くほど好きなチョコレートと温かいココア。そしてA。俺は今好きな物に囲まれている。
「あとでお金払わせて？」
でも享受するだけでは納得がいかない。運転も任せているわけで、ガソリン代や食費を出さなければ採算が合わない。
『いらない。今日は奢られて？』
「でも……」
『でもじゃない。私が好きでやってるんだから』
ねっ、と微笑む彼女は10歩も100歩も先を歩いていた。
『大人しく奢られてくださいっ』
届きそうで届かない。これこそが俺が10年以上片想いをして、未だに叶わずに手間取っている理由の1つだ。モグモグ、と腹ごしらえを終えたAは温かい玄米茶に舌鼓を打つ。
『……私さ、照を放っておけないの』
「え？」
ウェットティッシュで手を拭き、最近誰もが持ち歩くようになった消毒用のアルコールジェルで消毒してハンドルを握る。
『やらかしのファンにでっち上げられて謹慎した時もだったけど。ホテルで一緒になった相手が実は未成年で、さぁこれからって時に売られて、隙ばっかりで』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 504人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年11月29日 19時
