Beautiful Moon 2nd (ページ6)

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過去に囚われたってページ6

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「あれ、照髭伸ばしてんの？」

「うん。たまにはいいでしょ？」

照の顎と口周りを薄らと黒が覆う。元々強面な照が髭を蓄えるとよりワイルドみが増す。背丈があって体も厳ついから近づいてくると威圧感が半端ない。

「でもなんで急に髭を？」

真っ先に浮かぶのは仕事だ。俺みたいに髭脱毛をしたアイドルは増えたけど、役者さんや役者志向のアイドルは自力で伸ばして蓄える人が多い。

「実はさ……」

照はなぜか拗ねて唇を尖らす。俺は地雷を踏んだ意識はなかったから余計なこと言ったっけ、と戸惑う。

「Aが、」

「なんだよAかよ、お疲れ」

名前が出てきた瞬間に照が言いたいことの半分が把握できた。どうせAが髭のある男性はかっこいい、とか言ったのだろう。目を見るより明らかだ。地雷を踏み抜いたのは俺じゃなくてAだったらしい。

「ねえまだ何も言ってない！」

どれだけワイルドだろうが中身は変わんねえな。ヤキモチ妬きで大人の余裕の微塵も感じない。

「分かるもん。どうせAに唆されたんだろ？」

「いや、そうなんだけど……」

照はしおらしく肩をすくめた。

「仕方ねえから聞いてやるよ」

相も変わらず拗ねているけれど、ここは年上として聞いてやるしかない。俺は楽屋のソファーに座り直した。

「Aさ、2月から舞台やるでしょ？」

「おう」

アニメや実写映画にもなった超大人気コミックが舞台化される。その主要キャストの1人としてAが出演する。

つい最近稽古中に足を怪我をしたらしく、Aは絶対安静でできるだけ足に負担のかからない場面を中心に稽古を進めているらしい。全部照が教えてくれたからよく知っている。

「その中に元彼、いるんだけどさ」

「……おう」

これもよく知っている。長い時間を過ごす中で元彼への思いが蘇ったらどうしよう、と嘆き、人間そこまで惚れやすくねえよ、と阿部ちゃんが毒づいていたからしっかり覚えていた。

「元彼さんの髭かっこいいって……」

「Aが言ったの？」

「10年前に……」

ずっこけていいだろうか。呆れてもいいだろうか。10年前なんてデビューどころかメンバーが増える前だし、SnowManが生まれてまだ1年じゃねえか。

そして20代になりたての頃の話を掘り返し、嫉妬している照にかける言葉がない。

「そ、そっか……」

俺は心底困り果てた。