Beautiful Moon 2nd (ページ38)

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泣いちゃうんだろうなページ38

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俺なんでタキシードを着て結婚式場でふっかと写真撮ってるんだろう。そもそも一緒に花束を持つのがどうしてふっかなのだろう。

「お前さぁ、顔に出すぎなのよ」

「え？」

「そりゃ隣はAがいいだろうけど、もうちょっと楽しそうな顔してくんないと俺が凹むよ？」

その全ては仕事だから、と一蹴される。そう、これは仕事なのだ。

ジューンブライドの季節に発売される雑誌の企画でブライダルトークをする。そのための撮影だ。

「そうだよ。Aが良かったよ」

「あの、もっとビブラートに包んでくれない？」

「オブラートな？」

「あれ？」

ビブラートに包んでどうするつもりなのか。ふっかはしっかりしているようで結構な天然だから言い間違いも多い。ビブラートとオブラートはよく似ているけれど全く違う。

撮影の休憩中、ココアを飲みながら結婚について考える。

「なんかウケるよな。結婚式場で男2人がタキシードでバッチリキメてるって」

「しかも相手はいないっていう」

「お前はいるじゃん。今日は俺がAの代わりってだけで」

「どこか代わりになってんの？なってねえし」

「酷いな」

Aと結婚か……
付き合ったのは20代に終わりが見えてきた時期だった。思春期の片想いがまさか大人になってもなお続いているとは思わなかったし、最終的に想いが届くことはもっと予想外だった。それも結婚を意識する年齢で。

「やっぱ照も結婚とか考えてるの？」

「めちゃくちゃ考えてるよ？本当は今すぐにでもしたいし」

Aは男女問わずとにかくモテる。ふっかが女の子にモテるのと比べ物にならないくらいだ。結婚で縛り付けるような真似はしたくないけど、既婚という盾があれば諦める男達は必ずいる。自分の中に常にある嫉妬心も少しはマシになると思う。

「お互いじいちゃんとばあちゃんが生きてるうちに結婚式も挙げたいねって話してるし」

残念ながらAの父方の祖父は亡くなっているものの、祖母や母方の祖父母は今も元気だ。俺の方も元気だけど、いつどこで何が起こるか分からない。

いつでも味方でいてくれて、何歳になっても俺達を可愛がってくれる7人に晴れ姿を見せたい。その思いは俺もAも持っている。

「あと単純にAのドレス姿を見たいんだよね」

純白のウェディングドレスに身を包み、照れ笑いを浮かべる姿を。